電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第606回

(株)ジェイ・イー・ティ 執行役員 経営統括本部 本部長 伊藤聡氏


ラピダスから次代開発を受託
インドを視野、人事制度強化へ

2024/12/20

(株)ジェイ・イー・ティ 執行役員 経営統括本部 本部長 伊藤聡氏
 (株)ジェイ・イー・ティ(岡山県里庄町)は、旧エス・イー・エス(株)の半導体事業部門を母体として2009年に設立された半導体洗浄装置メーカーだ。顧客の要求仕様に合わせて細やかなカスタマイズを手がけていることが特徴で、主要顧客である韓国、中国、台湾の半導体メーカー向けに加え、Rapidus(ラピダス)から次世代技術の研究開発も受託している。直近の取り組みを執行役員 経営統括本部 本部長の伊藤聡氏に聞いた。

―― 戦略機種として300mmウエハー対応バッチ式洗浄装置「BW3500」をリリースしました。
 伊藤 これまでの主力機種「BW3000」が開発から20年を経過したため、投資の中心になっている28nm以上のプロセスをターゲットに、RCA洗浄で他社製品からの切り替えを意識して開発した。面積を15~16%、全長を20%それぞれ削減してフットプリントを低減し、新たな搬送方式の採用、OHT専用ポートの設置や薬液雰囲気漏れ軽減による気密性の向上、破損防止対策、操作性向上などを図った。中国や韓国などで引き合いに対応しているところだ。

―― 足元の景況感は。
 伊藤 24年は、当初期待された景気回復が遅れ、我慢の年となった。DRAMは生成AI向けサーバーやGPUにHBMの需要が拡大し、価格上昇に伴って新たな設備投資も増えたが、レガシー半導体向けの設備投資は中国の一部ファンドリーで設備稼働率が停滞したこともあって減速している。加えて、中国市場では現地の新興洗浄装置メーカーとの競合も激しくなってきている。

―― 新製品について。
 伊藤 独自のヒーター技術を使った硫酸&過水を使用せずにレジスト剥離できる枚葉式洗浄装置「HTS-300 EcO3」をリリースする。処理面を反転させて、ウエハー表面をIRヒーターで加熱しながらオゾンガスを噴霧することで、硫酸と過水を使用せずレジスト剥離を行うことが可能だ。ミストが拡散せず、パーティクルの発生量が少ないことも特徴で、できるだけ早く上市したい。

―― ラピダスから研究開発業務を受託していますね。
 伊藤 次世代半導体製造技術の試作装置製作に関する研究開発業務を4月に受託した。守秘義務があるため詳しくはお話しできないが、リン酸でナイトライドエッチング処理を行う枚葉式装置に関するものだ。
 ラピダスはIBMと戦略的パートナーシップを締結しているため、基本的にIBMのラインにある装置が導入されるが、リン酸エッチング処理についてはIBMに枚葉式がなく、別途開発が必要だった。当社は独自の特許をもとに韓国の大手メモリーメーカーのプロセスに類似技術の採用実績があり、これを評価いただいた。
 現在α機による研究開発段階を終えて、試作装置(β機)の製作に関する研究開発の段階にある。27年稼働予定の量産ラインへの納入を目指す。

―― 今後の事業展開について。
 伊藤 バッチ式はなくならないが、枚葉式の比率が上がっていくことは確かなので、前洗浄だけに限らずラインアップを拡充していきたい。その一環としてSiCパワー半導体向けの展開を開始し、すでに韓国で納入実績を上げた。日本での展開も始めており、欧州市場も会社として可能性を検討していきたい。
 加えて、インドの半導体プロジェクトから引き合いを得ているため、現地調査を始めた。サービスサポートの体制づくりが課題だと考えており、現地企業と組むのか、自前で実施していくのかを検討中だ。
 また、昨今は人材採用が難しくなっているため、安定した雇用環境を整えることと、教育制度の充実を図る方針だ。25年度に向けて新人事制度の素案作りに着手しており、キャリアパスを整備しながら、若手エンジニアを社内で育てていける仕組みを構築する。インターンの受け入れも始めており、人材をさらに充実させていきたい。


(聞き手・特別編集委員 津村明宏)
本紙2024年12月19日号1面 掲載

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