電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第84回

今や最大の半導体ユーザーは韓国サムスン、2位はアップルだ!!


~歌は世につれ人につれ、しかして半導体も時代変化に相応~

2015/2/20

 「それにしても時代はすっかり変わったものだ。今や韓国サムスンは半導体ユーザーとして世界最大の存在として君臨している。DRAM、フラッシュメモリー、TFT液晶の生産チャンピオンである同社が、電子デバイスの消費もズバ抜けて多い、ということはスマホ、タブレット、さらにはノートPCを制したものが勝つという図式を表している」


 これは半導体商社の大手幹部の談話である。米国ガートナー社は、先ごろ世界の電子機器メーカーの半導体消費量に関する最新統計を発表したが、それによれば2014年のユーザーランキングは前年に引き続きサムスンがトップとなり、実に321億ドル(何と約4兆円)の半導体を消費したのだ。これは世界に存在する数多くの電子機器メーカーの中で、サムスンが世界半導体全体の10%弱を消費しているというサプライズの数字なのだ。そして、2番手につけるアップルもまたスマートフォン、タブレットの超大手であり、伸び率はサムスンを大きく上回っている。

 筆者が記者デビューした70年代後半には、半導体の最大ユーザーといったら何といってもIBMであった。メーンフレームコンピューター、すなわち大型コンピューターのぶっちぎり世界王者であったIBMは半導体消費ランキングもトップ、しかして半導体生産においてもキャプティブであったが、事実上の世界チャンピオンであった。そのIBMは、今やノートPCをレノボに売り払い、コンピューターサービスとシステムの世界にのめり込み、業態をすっかり変えてしまった。

 80年代に入ると、ソニー、パナソニック(当時は松下)など世界に冠たる日本の家電メーカーの半導体消費量が爆発的に増大する。パイオニア、トリオ、オンキヨー、赤井電機などの高級オーディオは日本の独壇場であり、ここに使う半導体の量もバカにならなかった。パイオニアなどは、オーディオメーカーでありながら、自前で山梨に半導体の量産工場を一気に立ち上げた。そういう時代の空気は今に再現しようもないが、向こう30年かかっても日本の家電産業を打ち破る敵はどこにも現れないという世論であった。

 90年代に入ると、パソコンとインターネットの時代が到来する。半導体のビッグユーザーはあっという間にパソコンメーカーに移行していく。ウィンテル支配の時代が始まる。しかして、今日にあっても半導体消費ランキングの3位にHP、4位にLenovo、5位にDellが並んでおり、まだまだパソコンメーカーの半導体ユーザーとしての地位は高いということが良く分かるのだ。

 ちなみに日本メーカーとしてランク入りしているのは、6位ソニー、10位東芝の2社だけであるが、彼らはいずれも日本を代表する半導体メーカー大手であることにも注目する必要がある。ファブレス、ファンドリー時代の到来がいわれて久しいが、やはり良い半導体を作れるメーカーは半導体消費量も大きく、要するに「半導体で食えるメーカー」となっているのだ。

 中国メーカーの躍進も目立ってきた。前記のLenovoは、M&Aによる事業拡大を図り、実に前年比で33.9%増という成長ぶりを見せた。Huaweiもまた前年比21.6%増と急上昇したが、通信機器やスマートフォンの事業拡大が奏功した。

 「サムスンという存在は得てして日本の敵という認識が多いということは少しおかしい。NTTドコモが現在、戦略の要に据えているのはもちろんiPhoneであるが、サムスンのGALAXYも一時はかなり前面に押し出していた。サムスンの有機ELの鮮明画面を好む日本のユーザーも多いのだ。そして何よりも、サムスンが1年間に購入する日本企業の電子部品は実に1兆5000億円にも達する、ともいわれている。日本にとって最大のお客様は今やサムスンなのだ」

 これは政府の中枢にいる人物が、うなるようにして言った言葉である。なかにし礼は作詞家で、かつ近年は小説家として大活躍しているが、日本経済新聞紙上で実に味なことを言っている。要旨としては次のようなものだ。歌は世につれ、人につれという時代は終わった。多くのデジタル化された人たちが、売れる歌のマーケティングをして新しい曲を生み出す。ヒットはするが、そう心には残らない。たった一人の美空ひばりを生み出す力すらない。氏の指摘は誠にすばらしいが、均一化された個性、データ絶対重視のマーケティング、直接のヒアリングよりネット検索という時代にあって、日本企業はどうやってかつてのようなビッグヒット製品を生み出していくのだろうか。

電子デバイス産業新聞 特別編集委員 泉谷渉

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