住友重機械工業(株)(東京都品川区)は、推進中の中期経営計画2026で成長を牽引する重点投資領域の1つに半導体分野を掲げ、グローバルでの販路拡大に取り組んでいる。2025年1月には、メカトロニクス事業部のレーザー装置事業を、イオン注入装置事業を手がける住友重機械イオンテクノロジー(株)(SMIT)と統合するほか、これに先立ち10月には(株)SCREENセミコンダクターソリューションズからフランスのレーザーアニール装置の子会社Laser Systems & Solutions of Europe SASU(LASSE)の株式を100%取得する株式資産売買契約を締結した。足元の状況や今後の展望についてSMITの代表取締役社長である月原光国氏と、住友重機械工業のメカトロニクス事業部 装置機種統括部長を務める千田剛史氏に話を聞いた。
―― 各事業の足元の状況から伺います。
月原 SMITのイオン注入装置は、高電流、中電流、高エネルギー、高電流・中電流の両領域に対応可能なオールインワンタイプの4つをラインアップしており、国内で約6割のシェアを持つ。主な用途はイメージセンサーとロジック向けだが、昨今のトレンドであるAI用のGPUやHBMには使用されていない。24年度はこれまでの受注残で予算を上回る見通しだが、新規受注が低迷しているため、いったん足踏みをする。中期経営計画で掲げた26年度の売上高目標を見直すことになるだろう。
千田 レーザー装置事業は、パワー半導体向けのレーザーアニール装置が主力であるため、シリコンおよびSiCのパワー半導体市況に大きな影響を受ける。EVを中心に電動車向けの需要が23年下期から低迷しており、受注残を抱えてはいるものの、新規受注が落ち込んでいる。SiCのさらなるコストダウン進展や全固体電池の実用化といったブレークスルーにより、27年には電動車市場が再び活性化すると想定しており、25年後半から受注が活発化してくると期待している。
―― SMITとレーザー装置事業の統合について。
月原 イオン注入とレーザーアニールは前後する工程であり、顧客にソリューション提供が可能になる。サービスネットワークの共通化が図れることに加え、生産拠点としてSMITの愛媛事業所(愛媛県西条市)とレーザー装置事業の横須賀製造所(横須賀市)を柔軟に運用できるようにもなるため、大きなシナジーが期待できる。SMITの約700人にレーザー装置事業の100人強が加わることになるため、現在複数のワーキンググループを作って統合の準備を進めているところだ。
千田 すでにSMITと顧客情報の共有化を進めており、そのなかでこれまで受注実績がなかったメモリーの顧客からレーザーアニール装置の受注をいただくという事例ができた。装置ラインアップが増えたことで、今後ますます魅力的な提案ができるようになるはずだ。
―― LASSEの買収については。
千田 関係各局の審査や認証を受けている段階にあるため詳細はお話しできないが、25年1月末にはクロージングに至る見通しだ。LASSEは、当社が手薄な欧州のパワー半導体メーカーに強固な販路を有しており、当社とレーザーの光源が異なるため、装置ラインアップを相互補完できる点が大きな魅力だ。パワー半導体以外の用途にも販路や顧客を持っているため、波が大きい半導体分野をカバーできるようになるとみている。
―― 楽しみが大きいですね。今後の方針は。
月原 これまではイオンのエネルギーと量、密度を制御するのが当社のコア技術だったが、事業統合と買収によって熱の制御が新たに加わる。自社技術として扱えるパラメーターが増えたことで、新たな事業展開が可能になるはずだ。これまでイオン注入装置という単一ビジネスだったが、社員に対して新たなチャレンジの場やキャリアパスを提示できるようになったことも大変喜ばしい。可能性をさらに広げるチャレンジを今後も継続したい。
千田 レーザー装置事業では、様々なレーザー光源を用いた加工用のマシナリーも手がけているため、新規アプリをどんどん育てていく。「グローバル展開」を目標に掲げているので、SMITとともに新たな拠点展開をどう進めるかも検討していくつもりだ。
(聞き手・特別編集委員 津村明宏)
本紙2024年12月12日号10面 掲載