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第604回

ソニー・ホンダモビリティ(株) 代表取締役社長兼COO 川西泉氏


移動空間に新たな価値を創出
第1弾EVを25年に受注開始

2024/12/6

ソニー・ホンダモビリティ(株) 代表取締役社長兼COO 川西泉氏
 日本発でモビリティーの新時代を切り拓くイノベーター最有力候補のソニー・ホンダモビリティ(株)(東京都港区)。ソニーと本田技研工業(ホンダ)という異業種同士の両社が、今までにないモビリティーやサービスの創造に挑むべく、2022年9月に創業した同社から、待望の第1弾電気自動車(EV)「AFEELA」が25年、ついにお目見えする。代表取締役社長兼COOの川西泉氏に、同社が描くモビリティーや半導体への考え方など幅広く聞いた。

―― 改めてホンダとタッグを組んだ理由は。
 川西 以前からホンダとは異業種交流などの機会があり、会社の歴史的な生い立ちやエンジニア同士の感覚が近いと感じていた。自動車業界が100年に一度の大変革期にあるなか、両社の知見や技術を持ち寄れば新しいことができるのではないかとの思いで一致。早速、少人数での勉強会やワークショップをスタートして議論を進めるなか、両社でモビリティー会社を立ち上げ、本格的に取り組んでいこうという結論に達し、22年9月の合弁会社(JV)設立に至った。

―― 貴社が描くモビリティーとは。
 川西 既存の自動車における運転は楽しみでもあるが、運転という制約でもある。当社は、運転から解放される時間、自由度の高い移動空間にまだ世の中に存在しない新たな楽しみ方、価値を創出しようとしている。電車、飛行機、バスやタクシーなどの公共の移動手段では、乗員はスマートフォン(スマホ)やタブレット、読書など運転なき移動を体験している。これがクルマで運転なき移動が可能になれば、最もパーソナルな自由度ある移動空間が実現する。この移動空間に対し、将来的には既存の映画鑑賞やゲームなどとは異なる、まったく新しいエンターテインメントを提供していきたい。なお、規模は追わず「質」で勝負する。

―― 「クルマ」はソニーにとって大きな挑戦です。
 川西 自動車業界では昨今、ソフトウエア(SW)が重視されているが、そこはソニーとしてはすでに確立した領域である。一方、自動車は質量が大きくメカニカルな要素が多い。これは、従来のソニーにはない要素だ。このクルマの基本性能、人間でいえば体力に該当する部分は、ホンダの知見やノウハウが活かせる点がJVの利点である。ちなみに、AFEELAの車両はホンダの米国オハイオ州の工場で製造する。安全性の側面では、ADAS関連で両社ともに蓄積があり、これを活かせる。さらに体力の逆側に該当する知性・知力の領域はスマホやゲーム機器で培ったソニーの知見、自動運転にはaiboで培ったロボットでの知見・技術が活きるなど意外と親和性が高い。

―― 半導体への考え方は。
 川西 自動運転を意識する場合、周りの状態認識は必須であり、かつ低消費電力も必然となる。そのため、限られたバッテリー容量を効率的に低消費電力で活用し、あらゆるセンサー対応にも長けた多機能でバランスのとれたSoC開発が重要になる。まさにハイエンドスマホ向けSoCがこれに該当すると判断し、当社はスマホ向けSoC大手のクアルコム製プラットフォームSoC「Snapdragon Digital Chassis」を採用している。
 また、ECUの構成、これはクルマ側のシステムをどう構築するかと同義である。当社では現状、将来のE/Eアーキテクチャーを前提とし、ハブとなるECU、ADASのECU、ネットワークにつながるテレマティクスのECU、車室内空間を表現していくUXのECU/HMIのECUというように、ドメイン構成とゾーニングの間をイメージしたECU構成としている。AIの活用で当社の個性を打ち出していく。なお、自動車は依然CANが主体などインターフェースをはじめ、新旧技術の併用・融合は難しさでもある。

―― 新興EV大手は内製化の方向性です。
 川西 前提として、当社のEVでは人間の互換に相当するような直感的なコミュニケーションを目指している。例えば、外の空気が冷たいと感じ、体内にもそれが連動する感覚、クルマ同士がコミュニケーションするような車内外の新しいあり方など。その実現に向けてコスト見合いではあるが、あらゆるものを調達し、活用していく方針だ。

―― AFEELAはいよいよ25年、上市ですね。
 川西 25年前半から受注を開始し、26年春には出荷を開始する予定だ。360度センシングはカメラ、LiDAR、ミリ波レーダーで構成予定であり、自動運転レベル2/2+からのスタートになりそうだ。詳細は年明けのCES2025で公表予定であり、楽しみにお待ちいただきたい。常に進化し、新しいものに挑戦し続けていきたい。イノベーティブなアイデア、技術があればいつでも歓迎である。


(聞き手・高澤里美記者)
本紙2024年12月5日号2面 掲載

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