関東に住む筆者だが、最近何かと長崎と関わることが増えている状況ににんまりしている。長崎の地を初めて訪れたのは高校の修学旅行。異国情緒あふれる街並みが印象に強く残り、眼鏡橋近くのいわゆる町中華然としたお店で食べた皿うどんの美味しさがいまだ忘れられない。それから数十年後、プライベートで再び長崎を訪れた。文化財や歴史にまつわる観光名所が多く、例えば坂本龍馬が興した日本初の商社「亀山社中」跡や、グラバー園を訪れると、幕末の時代のうねりに思いを馳せてしまう。もちろん、原爆資料館も訪れ、その凄惨さに胸を痛めた。
豊かな食材が豊富な五島列島・福江島にも足を伸ばした。ちょうどNHK連続テレビ小説の第107作『舞い上がれ』が放送中だったことも後押しした。後日、たまたまマーティン・スコセッシ監督の映画『沈黙-サイレンス』を観た。遠藤周作の同名小説を映画化したもので、舞台はキリスト教が厳しい弾圧を受ける江戸時代初期の島原や五島だ。大浦天主堂に展示されていたキリシタン弾圧の資料を見た後だっただけに、とても印象深かった。
島でいえば、長崎港から船で約40分の場所に位置する端島(通称軍艦島)も上陸できた。天候次第では上陸できないこともある。この島の炭鉱の最盛期であった1960年には約5300人もの人が暮らしていたそうだ。島内には小中学校や病院、映画館やパチンコ場などの娯楽施設もあり、街があった。しかしエネルギー政策が石炭から石油に取って代わったことで衰退し、1974年に閉山。島民が島を去り無人島になったが、2015年に端島炭坑含めた「明治の日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」がユネスコの世界文化遺産に登録された。だが廃虚と化した建物は年々風化が進み、風景が刻一刻と変化していると、上陸クルーズ船のガイドは説明する。船内に設置したビデオにはかつての賑わいの風景が上映され、当時の建物が朽ち果てて廃虚となった風景に転換していく映像には時代の流れを感じた。
ところ変わって長崎駅周辺では22年9月、武雄温泉・長崎間を結ぶ西九州新幹線が開業。駅前広場の整備やアミュプラザの新館建設が急ピッチで進められていた。前述の旅行に行った際、長崎の地を後にする時はもうこれで見納めだなと思っていたところ、その年の11月、アミュプラザ長崎新館の内覧会に参加する機会を得た。施設全体で246店の大規模駅ビルの取材とあって心が弾んだ。1階に有名アパレルブランドなど、長崎駅周辺に不足していたMDを揃え、長崎住民に新たな買い物場を提供するものとして期待される。
長崎の新しい歴史の1ページとなるだろう長崎スタジアムシティ
取材が終わり、今度こそ本当に長崎とは…、と思っていたらそれから約1年後、「長崎スタジアムシティ」の内覧会に参加することができた。場所はJR長崎駅から10分ほどの三菱重工造船工場跡地で、7.5haの敷地にサッカースタジアム「ピース スタジアム コネクテッド バイ ソフトバンク」、アリーナ「ハピネスアリーナ」、ホテル、温浴施設、オフィス、ブルワリーも含めて多彩な食を提供する商業施設などからなる、総延べ19万4000m²におよぶ複合施設。ちなみにスタジアムの最大の特徴は、観客席からピッチまでの距離がわずか5m、日本で最も客席とピッチが近接していることで、目の前でプレーする選手の声やボールを蹴る音なども感じられその臨場感は極めて高い。事業主はジャパネットHD、企画・運営はグループのリージョナルクリエーション長崎。投資額は約1000億円。試合が無い日でも滞在できる多彩な仕掛けを盛り込んでおり、「シティ」と呼ぶにふさわしい内容だ。スポーツと街づくりを融合させ地方創生を発信する。
またピース スタジアムは現在J2に所属する「V・ファーレン長崎」、ハピネスアリーナはバスケットプロリーグB1所属のバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」の本拠地で、両チームはいずれもジャパネットHDの地域創生事業のスポーツカンパニーに属する。様々な賑わいが生まれるとみられ、是非開業後の状況についてインタビューに行かねばと思った。
現在TBSテレビ 日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』が放送中だ。現代と1955年の端島が舞台で、1958年当時の端島の様子、長崎市内市街地を再現した映像は見事で、若い男女の群像劇や謎めいたストーリーも興味深い。個人的な興味も相当あることを割り引いても、過去と未来が織りなし新しい歴史を紡ぐ長崎の街から目が離せない。