HDI(ビルドアップ)基板をはじめパッケージ基板、FPC基板、リジッドフレキ基板などオールラウンドの基板メーカーである安捷利美維電子(厦門)有限責任公司(AKM Meadville Electronics(Xiamen)Co.,Ltd.)は、FCBGA基板などの高性能パッケージ基板の量産拠点として厦門新工場を立ち上げた。ガラスコア基板の製造にも乗り出そうとしている。同社共同CEOである方志榮氏に今後の事業展開を聞いた。
―― 足元の市況から教えて下さい。
方 スマートフォン市場は特に大きな動きはなく安定している。コンシューマー関連は動きが鈍い。一方で自動車市場は、LiB向けのBMS(バッテリー・マネジメント・システム)やADAS関連で好調に推移している。パッケージ基板も拡大基調にある。2024年は前年比10~15%増の11億ドルの売上高を目指す。中長期的には売上高20億ドルを目指す。今後の成長をFCBGA基板といった高性能なパッケージ基板事業と位置づけ、そのため積極的な投資を展開していく。
―― 現在の主力製品ならびに地域別売上構成比を教えて下さい。
方 アプリケーション別ではモバイルデバイス関連が約65%でトップを占め、自動車やコンシューマー関連がそれぞれ約15~20%となっている。地域別では欧米向けが70%を占め、残りが中国・ASEANである。
―― 高性能パッケージ基板の旗艦工場となる厦門新工場が立ち上がりました。
方 厦門新工場は敷地19万4000m²の用地を確保しており、全部で5棟の工場を整備する予定だ。すでに1棟が稼働しておりFCBGA基板の最新ラインを立ち上げた。24年12月から本格的に量産対応となる。2棟目も建屋は完成しており、25年から主要設備の導入が始まる。いずれもSAP工法を適用した高性能パッケージ基板の量産拠点となる。これまでに5億ドルを投じたが、最終投資額は12億ドルを見込んでいる。
―― 生産能力や具体的な製品は。
方 第1期棟は月産出荷能力で2300m²、2期棟目が稼働すれば同7000m²まで引き上がる。パッケージ基板の層構成は5-2-5構造で、ボディサイズは37.5mm角からスタートしている。
―― ガラスコア基板にも本格参入するのですか。
方 厦門新工場内に専用ラインを導入する計画だ。上海工場で数年前から本格的に開発をスタートさせ、基本工法を確立している。すでに世界の顧客に向けて認定取得のためのサンプル出荷を開始している。製品スペックは現在、9-2-9だが10-2-10まで高多層化することも可能だ。基板サイズは85~100mm角をサンプル出荷中だ。さらには120mm角をにらんだ開発も加速する。GPUやHBMなどを搭載したAIチップ向けに国内外の顧客に出荷する計画だ。
―― 日本市場の開拓に向けた取り組みは。
方 正直、日本市場向けはまだ大きな売上規模ではない。将来的には全社売り上げの10~15%まで引き上げたい。なぜなら、日本には自動車や産業機器の世界的な大手企業があるほか、最先端の半導体工場の立ち上げも進んでいる。当社が注力するパッケージ基板の潜在マーケットは大きいと認識している。このため、本社組織として日本市場を開拓するための専属組織を立ち上げたばかりだ。現在は5人程度だが早急に10人以上に増員したい。また、日本国内での潜在需要を本格開拓するため、早急に開発拠点も整備したい。良い出会いがあればM&Aも選択肢に入れている。
―― 欧州市場はどう取り組みますか。
方 欧州市場も自動車含めて、同様に重要な市場と捉えている。このため開発拠点の整備を含めて検討中だ。量産工場を建設する場合には東欧を優先したい。
―― 中国国内での投資の動きは。
方 中国でも先端基板の需要が旺盛だ。SiPやモジュール基板、リジッドフレキ基板などの新たな生産拠点として広州工場内に新棟を建設する。26年の稼働を見込み、関連投資額は20億元を計画する。AR/VRなどのウエアラブル機器向けに、半導体などSiP形態の部品内蔵基板(リジッド)も本格化するとみて専用ラインを整備する。一方、蘇州工場ではFCCSP基板などのBT基材ベースのパッケージ基板も強化中だ。22年末に新棟を立ち上げている。
―― 米中経済摩擦が激化しています。チャイナ・プラスワン戦略は。
方 23年からタイ・アユタヤに新工場を立ち上げている。投資額は1.5億ドルに上る。車載用途を中心にFPCや貫通多層板、ビルドアップ基板の量産拠点と位置づける。26年1~3月からビルドアップ基板の量産もスタートさせたい。一方、中国国内での車載用ビルドアップ基板の投資は抑制する。これにより欧米の顧客からの車載関連の受注を安定的に拡大させる。
(聞き手・特別編集委員 野村和広)
本紙2024年11月21日号5面 掲載