日米ともに次の政治のトップを決める戦いが激化している。米国においては、大統領に返り咲いたトランプ氏が相変わらず奇声を上げている。それにしても、民事裁判とはいえ婦女子を暴行したと認定された男が、再び大統領になり、ワーワー騒いでいるありさまは信じられないことである。
ちなみに、トランプが前回大統領であった期間に、筆者は「トランプ記者」などと言われて辟易したことがある。まあたしかに暴言、放言を繰り返す輩であるからして、そう言われても仕方がないのかもしれない。
それはともかく、女性初の大統領として期待を集めたハリス氏も当初はかなりの人気であったが、最後はトーンダウンしてしまった。その最大の原因は、政策論争や経済の展望などについて記者に質問されると、ほとんどまともに答えられないありさまを露呈してしまったからである。他方で、我が国における自民党の没落ぶりは見るのもつらいほどである。野党連合もお互いに言い争っているばかりで、ちっとも一本化した反自公政権のかたちが作れない。
こうした日米の政治状況の不安定さはあるものの、世界経済は比較的順調に動いている。特に米国の株価は史上最高を記録しており、絶好調である。中国も実態経済はそんなに良くないものの株価自体はかなり上がっている。これに連動するように、日本の株価も上がっており、4万円突破も十分にあり得る情勢だ。そして、どのような政権になっても「戦略物資」ともいわれる半導体産業に対する徹底的な支援策は全く変わらないだろうと筆者は見ている。
さて、半導体産業市場の構造変化については、驚かされるばかりである。筆者もたびたび指摘することであるが、スマートフォンやパソコンが60%を占める現在の半導体アプリケーションを考えた場合、それほどの伸びが期待できないにもかかわらず、世界半導体市場はかなりの勢いで伸びているのだ。
2024年は前年比15%以上の伸びは確実であり、90兆円の大台を超えてくるだろう。25年については、同じく前年比15%増を達成すると筆者は見ており、100兆円を楽々突破してしまうだろう。講演をしていて、いつも聞かれることはこの高成長はいつまで続くのですか、ということであるが、筆者は30年までは高成長を遂げると判断している。
ずばり申し上げておこう。30年段階では半導体は200兆円に迫る勢いであり、現在にあって最大の製造業である自動車の400兆円を追撃する立場になっていく。最大の要因は、なんといってもAI向け半導体であり、30年段階では全半導体の70%がAI向けと予想される。
現状にあって、AIを牽引するGPUはすさまじい勢いで伸びており、25年には前年比約30%増の8兆円にまで拡大すると思われるのだ。そしてなんといっても、強烈な牽引役となるメモリーが30兆円を楽々超えてきて、二十数%の成長を遂げると考える。何のことはない。AIの周りにはHBM(高帯域幅メモリー)やCXLといわれるメモリーがいっぱい必要になってくるわけであり、AIの進展はひたすらメモリーの爆裂成長をもたらすことになるのだ。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。