商業施設新聞
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No.979

さらに広がるフェムテック


安田遥香

2024/10/29

 10月17~19日、東京ビッグサイトにて「Femtech Tokyo」が開催された。女性である筆者は2022年の第1回開催以降、毎年足を運んでいる。今年は過去2回以上に盛況で、特に出入り口付近は人が滞留し通るのも一苦労なほどだった。

 フェムテック(Female+Technology)とは、女性特有の悩みを解決する先進的な技術を用いた製品・サービスのことである。2010年代前半ごろから欧米で広まり始めた概念で、日本においては20年前後から徐々に浸透してきた。経済産業省によると、25年時点でフェムテックの経済効果は約2.2兆円にも上るという。

 こうした潮流を受け、商業施設も店舗展開という形でフェムテックを導入している。(株)大丸松坂屋百貨店は19年、「大丸梅田店」(大阪市北区)の5階に「michi kake(ミチカケ)」をオープンした。月経カップやセルフプレジャーアイテムなど、これまで百貨店ではあまり取り扱ってこなかった商品を展開し、フェムテック専門店の先駆け的存在となった。また、(株)パルコはフェムテック専門店を中核に据えた医療ウェルネスモール「Welpa 心斎橋PARCO」(大阪市中央区)を21年にオープンした。このほか、「ラフォーレ原宿」(東京都渋谷区)や「イオンレイクタウンkaze」(埼玉県越谷市、期間限定出店)などでもフェムテック専門店の出店実績がある。

ティーガイアが展開するフェムテック専門店「FEMTECH LAB」の2号店
ティーガイアが展開するフェムテック専門店「FEMTECH LAB」の2号店
 直近では携帯ショップなどを展開する(株)ティーガイアがフェムテック専門店の運営に参入した。23年11月にオープンした「FEMTECH LAB アトレ恵比寿店」(東京都渋谷区)は、店内に試着室や接客カウンター、カウンセリングスペースを備えている。同店で働く従業員の約半数は携帯ショップでの接客経験があるといい、そこで培った接客力を活かして来店客の悩みに寄り添った商品を提案している。同社はかねて複数店展開を構想しており、10月11日に「そごう横浜店」(横浜市西区)に待望の2号店をオープンした。

 これらフェムテック専門店では、月経、妊娠・出産、更年期など、女性の身体的特徴に起因する様々なトラブルを解決・軽減するためのアイテムを販売する。例えば「吸水ショーツ」。ショーツ自身が経血を吸うので、着用すれば月経期間中も漏れの心配をせず過ごせる。防水・抗菌加工が施されており、衛生面も問題はない。出始めたころは海外製のものが多かったが、最近では「ユニクロ」や「ドン・キホーテ」などといった日本の有名企業も開発・販売している。

 フェムテック商材も本当に幅が広がった。今年のFemtech Tokyoで筆者が最も驚いたのが「いきみ逃しサポートグッズ」だ。出産時のいきみ逃しにはテニスボールが有効だと言われているが、この目的外使用に開発者が疑問を感じたことから作られたのだという。使用用途はかなり限定されているが、出産を控える女性にとっては「あったら嬉しい」製品であることは間違いない。

 これからフェムテックはどのような広がりを見せるのだろうか。また、商業施設は今後フェムテックをどのような形で取り入れていくか。次回のFemtech Tokyoで、さらに進歩した商品やサービスを見るのを今から楽しみにしている。
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