ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(株)長崎テクノロジーセンター(長崎県諫早市)は、ソニーが米フェアチャイルドセミコンダクターの工場を買収し、1987年12月4日に設立したソニー長崎(株)が前身。近年は、モバイル向け積層型CMOSイメージセンサーの生産能力の増強に力を入れている。2011年には、CMOSイメージセンサー用のFab3とFab4の生産ラインを整備し、20年3月から増設棟Fab5の段階的な建設工事を開始。23年にはすべての工事が完了し、ソニーセミコンダクタソリューションズグループのモバイル向けイメージセンサーの基幹工場と位置づけられている。今回、長崎TEC長の石川良光氏に話を伺った。
―― ご出身は長崎市ですね。
石川 長崎北高校を出て、長崎大学工学部に進み材料工学を専攻した。卒論は高分子材料のプラスチック合成に関するものだった。卒業してすぐは他の会社で働いたが、Uターンで長崎に戻り、もともとソニーブランドが好きであったことから、90年4月にソニー長崎に入社した。
―― 入社後の仕事は。
石川 ユニットプロセスのエンジニアの仕事に就き、LPCVDなどのプロセス開発を担当した。17年から2年間、山形テクノロジーセンターに赴任した以外は、ずっと長崎テクノロジーセンター(長崎TEC)で勤務しており、19年に現職のプロセス技術部門長に就き、24年春に長崎TEC長を拝命した。
―― 長崎TEC長として部下に示唆していることは。
石川 製造事業所として生産計画をしっかり達成し、責任を果たしていくことだ。そのためにも、社員が生き生きと活躍し、働きがいを感じられる工場にしたいと考えている。
―― さて、お家芸のCMOSイメージセンサーの拡大が続いていますね。
石川 ソニーセミコンダクタソリューションズグループとして、イメージセンサーの世界シェアを、25年までに60%(金額ベース)に伸ばすことを目指している。第5次中期におけるイメージセンサー向け設備投資額は、第4次中期の約7割を想定しており、今後も市況の変化を慎重に見極めながら、大判化、高画質・高性能化に伴うイメージセンサーの需要増に応えるための生産キャパシティーの増強を継続する方針だ。
―― 大型工場のFab5については。
石川 Fab5は長崎TECにおける5棟目の生産棟で、第1期工事では延べ4万8300m²(クリーンルームは1万m²)、第2期工事では延べ5万4000m²(クリーンルームは1万3000m²)、第3期工事では延べ5万3600m²(クリーンルームは約1万3800m²)を立ち上げた。
―― 生産工程のAI活用については。
石川 全社を挙げて、スマートファクトリープロジェクトを進めている。生産工程でのAI活用も進んでおり、歩留まりの改善、品質信頼性の向上、生産リードタイムの改善など効果が出ている。この活動を通じて得られた知見、あるいは技術は、最初からFab5に実装している。
―― 地域との共存、SDGs対策は。
石川 九州の恵まれた環境資源に配慮しながら、地域社会とともに持続的成長を高いレベルで達成することは我々の重要なテーマであり、新生シリコンアイランド九州の実現に向けた動きが加速するなか、産官学が連携して半導体人材の育成に取り組んでいる。また、健全な地球環境があってこそ自分たちの事業が成り立っているという考えのもと、環境保全に力を入れている。最新工場であるFab5は、半導体業界最高レベルのエネルギー高効率を目指して設計し、クリーンルームの稼働に必要なエネルギーの消費効率を15年度比で約30%改善した。今後も半導体企業と地域社会のサステナブルな関係性の進化を常に意識し、地域振興にも貢献していきたいと考えている。
(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
本紙2024年10月24日号1面 掲載