電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第600回

AIチップは30年に半導体のメーンアプリに急浮上するのだ!


データセンターに加え、スマホ、パソコンにも搭載され時代の花形

2024/10/18

 猛暑と台風の季節が過ぎ去り、ようやくにして秋の冷気が感じられる今日この頃である。長く降り続いていた秋雨の中をエレガントな秋模様の女性たちが、シトシトと歩いていく様はまことに心打たれるものがあるのだ。

 それはともかく、秋口に入っても半導体のブームは鎮まるどころかますます盛んになってきたといえるだろう。パワー半導体など一部の企業を除いては、概ねかなりの好調を維持している。そしてまた、設備投資ラッシュも続いているのである。

 さて、半導体産業は、2025年には前年比15%以上の成長を遂げ100兆円の大台を超えてくるのは、ほぼ確実な状勢だ。30年では200兆円以上の市場を予想する向きもあり、現在の製造業トップの自動車産業の400兆円を一気に追い上げていくことになるだろう。

 ところで、現在の半導体のアプリケーションを見れば、スマホが40%と最大であり、次いでパソコンが20%、データセンターが10%、自動車が10%、液晶TVが5%、その他は産業機械、白物家電、ロボット、医療など様々である。

 しかしてここに来ては、AI(人工知能)が半導体の爆裂成長を促す最大の存在になっている。すでに、複数のチャット型生成AIは実用レベルで一気に使われるようになっている。データセンターにおいては、AIサーバーがここに来て年率40%増という勢いで伸びているのだ。AIの分野は30年まで、年平均53.3%成長すると予想されており、これに連動し半導体市場は飛躍的に伸びることは当然なのである。

 さらにいえば、AI機能搭載のスマートフォン、つまりは「AIスマホ」の市場も急速に拡大している。大手のサムスン電子を皮切りに、アップルも新機種の「iPhone16」でAIを活用した「Apple Intelligence」を開始する。AIスマホの出荷台数は25年に約3.9億台が見込まれ、市場全体の3割に到達する見通しだ。そしてまたMicrosoftによれば、パソコンのすべてにAI機能が搭載される日も遠くはないという。

 筆者の個人的な予想なのであるが、30年段階になれば半導体のメーンアプリは圧倒的にAI向けになると考えている。おそらくは、全半導体の60~70%がAI向けに使われると思っており、それこそ「AIを制する者は世界の半導体を制する」と言っても良いだろう。

エヌビディアはAIチップ市場で圧倒的地位
エヌビディアはAIチップ市場で圧倒的地位
 ここで重要なのは、現状で米国のエヌビディア(何と24年6月25日、株式時価総額で世界トップ=527兆円を記録)がAI向けチップのGPUでほぼ世界シェア独占という状況であることだ。エヌビィデアはファブレス、つまり工場を持たない半導体企業であり、その製造のほとんどを台湾のTSMCに委託している。

 そしてまた、エヌビディアはこれまで30年以上にわたって長く世界チャンピオンの座にあったインテルを打倒して、24年の世界王座のベルトを巻くことは間違いないだろう。これが、大きなゲームチェンジなのだ。さらに言えば、すでに23年時点で10兆3000億円の売上をあげている台湾のTSMCは、半導体生産という点で事実上の世界チャンピオンであり、これも大きなゲームチェンジとなっている。

 半導体産業がロングレンジのウルトラ成長に突入していくことは間違いないと見ているが、AIをコアとした時代は様々なゲームチェンジを呼んでいくことになるだろう。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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