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第35回

日進工具仙台工場、小径エンドミルの生産・開発拠点、自社開発の装置で自動化を推進


2024/10/8

 日進工具(株)(東京都品川区大井1-28-1、Tel.03-3774-2459)は、1954年に創業し、2024年に70周年を迎える企業。金属などの部品加工向けエンドミルや金型の製造・販売を行っており、刃先径6mm以下の小径サイズのエンドミルを中心に製造・販売している。

 同社は1972年にパワーエンドミル、80年に超硬ソリッドエンドミルの生産を開始。順調に業績を伸ばしてきたが、91年11月に当時の主力工場であった藤沢工場が火災で焼失してしまった。

 藤沢工場焼失前から、同社では工場の集約化を目的に仙台工場(宮城県黒川郡大和町松坂平2-11)の用地を取得しており、93年に仙台工場の操業を開始。バブル崩壊もあり、「工場の立ち上げは最悪のタイミングとなった」(代表取締役副社長 後藤隆司氏)

 その後製品の小径化・高機能化に特化する戦略を展開。現状直径6mm以下の小径のエンドミル市場でのシェアは47%程度となっている。「差ではなく、違いで勝負する」(後藤副社長)を念頭にビジネスを展開している。

仙台工場外観
仙台工場外観
 仙台工場は土地面積3万2160m²、建物面積1万2500m²、従業員数105人。93年にA棟、94年にB棟、98年にC棟、2006年にD棟、16年にE棟が完成している。また、19年11月には開発センターが竣工、20年3月に操業を開始している。開発センター完成以前に開発棟として使用していた建物は、現状倉庫棟として活用している。仙台工場内には子会社の日進エンジニアリングの本社もあり、コーティングの開発、量産再研磨を行っている。他社では再研磨を外部に委託することが多いが、同社では自社で対応している。

 同工場は地震が多い土地柄、万全の地震対策を施している。CNC工具研削盤は、すべて固定し震度5以上の地震で停止する装置を取り付けている。検査装置もすべて固定。その他の設備や装置などもワイヤーなどで落下や転倒を防止している。また、D棟は耐震構造を採用し、直径1mの杭を60本打っているが、東日本大震災の際には一番被害を受けた建物となった。震災後に建設したE棟も耐震構造を採用。D棟では天井から吊り下げていた空調機器などを、ぶどう棚を採用することで、隙間を開け擦れないようにして、隙間を埋める工法を採用した。また、D棟には太陽光パネルを設置、震災停電時に室内灯などに使用するための電力を蓄電している。

 開発センターは、設計・施工は奥村組が担当。「オールラウンド免震」を採用している。通常の免震構造は常に微振動があるため、微細加工には向いてないという欠点がある。オールラウンド免震では、免震ダンパーの中心にピンを入れることで平常時は振動しない仕組みを構築。大地震の際はピンが折れて免震化する仕組みを採用した。これまでに2回ピンが折れて免震化している。開発センターでは、切削技術などの研究を行っており、新製品を開発、新製品開発用プログラムなどを作成するため、ユーザーと同じ機械を入れている。小さな工具を創るための専用のCAMである「NS MicroCAM」を開発し、販売している。ユーザーと同じ機械を入れることで、顧客に切削の評価などしてもらうことができる。

 同社の製品はセンターレス加工、面取り、C面加工などを行い半製品としたところで一回荷受室に戻し、注文が入ると製品化して出荷する。

 従来CNC工具研削盤は、ロロマティック製のものを使用していたが、自社開発の研削盤であるTGM(Tool Grinding Machine)への移行を進めており、9割以上がTGMで加工している。TMGは自社で開発し、メーカーに製造を依頼。設備技術課を立ち上げ、整備、修理、ホーバーホールを実施し、メンテナンスコストを抑えている。測定器も自社開発し、TGMとセットで使用することで、自動で補正を加え、加工精度を上げている。

 CBN(Cubic Boron Nitride=立方晶窒化硼素)焼結体を使用した工具の生産は、ワイヤー放電加工機でワイヤー加工した後、ロウ付け加工を行う。従来、ロウ付けの工程は職人が手作業で行っていたが、自動化に向けて半自動機を導入。双腕ロボットを使って、ワークを入れ替えることで、600本連続での加工ができるようになった。

 同工場では、保護キャップの取り付けの自動化、検査包装工程の自動化を実施、包装の自動機を開発した。また、製品のパイプケースやキャップも内製化している。

代表取締役副社長 後藤隆司氏
代表取締役副社長 後藤隆司氏
 同工場では、社内教育に注力しており、3人の教育担当者が、新入社員などに6カ月の研修を行っている。研修専用の生産機を数台用意し、実機での経験を積んで生産現場に入る体制。これに伴い、先輩が後輩に正式な手順を踏まない経験を教えることは禁止した。

 同工場の将来について後藤副社長は「設備投資はできるだけやっていきたい。設備の更新などが中心となるが、受注があれば建屋の投資も考えていく」としている。また「人手をかけないものづくりを実現していく。今後は少子化などで人手不足もあるので、自動化して人手に頼らない工場を目指していく」と語った。

(編集長 植田浩司、協力:(株)NCネットワーク)
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