“都市型”という言葉を取材で聞く機会が増えてきた。取材を担当する近畿地方は、他のエリアに比べて百貨店が数多く存在し、鉄道会社は駅構内や駅周辺で商業施設を展開しているため、主要駅の周辺に商業施設があるのは当たり前の状態。郊外に目を転じると、イオンモールがあちこちに大型ショッピングセンターを設け、三井不動産と三菱地所・サイモンの大手2社のアウトレットモールに加え、最近は三井不動産の「ららぽーと」も存在感を増してきた。一方で、かつてのように駅前だけでなく、郊外も商業集積が進む近畿地方で、都市型商業施設や都市型店舗を展開する意義があるのか、疑問に感じることがある。
そもそも、都市型とはどういう意味なのか考えてみた。都市にある型=人口が集中する地域向けのフォーマットと言うべきなのだろう。各社の発表では、都市型商業施設や都市型店舗などの言葉を見る機会が多いが、従来の商業施設や店舗とは違いますよ、と訴求する意味合いが強いのだと考える。ところで都市型の対義語は郊外型に加えて、田舎型ではないかと思っている。ただし、田舎型商業施設や田舎型店舗は聞いたことがない。
この都市型という表現で最も成功したと思うのが、イオンリテールの都市型SC「そよら」だ。1号店のそよら海老江を内覧した時は、業界紙の記者仲間からも「旧施設よりも新施設は駅から離れたのに、何で都市型なんだ?」と突っ込みが生じたほど、都市型の認識が薄かった。しかし、新金岡→東岸和田→古川橋駅前→金剛と新施設を開業していく中で、郊外型SCによく見られたハレの日利用&わざわざ買い物に行くというイメージを払拭し、そよらは日常利用&ついでに立ち寄る場所として、来館客に新たなイメージを植えつけた。見事だと思う。
都市型店舗も最近増えている。特に顕著なのが、カインズ、DCMホールディングス、コーナン商事の3社がしのぎを削るホームセンター業界だ。DCMHDは2022年11月、恵比寿ガーデンプレイス内に初の都市型新業態「DCM DIY place」を開店したが、これに続いて、カインズは近鉄百貨店とフランチャイズ契約を締結し、大阪市阿倍野区の商業施設「and」内に都市型店舗をオープン。コーナン商事も話題のグラングリーン大阪内に都市型店舗「gardens umekita」を開店した。
HC業界は元々、土地が安く家賃も手ごろな郊外に大型店舗を構え、ドミナント形式で店舗網を拡充してきた。今もその動きは継続しているが、これまでに大きな業界再編もなく事業を進めてきたため、郊外の適地が徐々になくなりつつある。そこでHC各社が目を付けたのが、今まで土地が高く、家賃も高騰し、なかなか手が出せなかった都市=人口密集地である。もちろん、郊外のフォーマットをそのまま持ってくるのは難しく、各社はDIY、ペット、ガーデニングなど、自社が強い部分を切り出して専門店のような店構えに仕上げた。あくまで実験店だと言う事業者もいるが、「既存の雑貨店と相性が良いので、今後、雑貨店のある立地で多店舗展開したい」と鼻息荒く語る事業者もいた。こうした都市型商業施設や都市型店舗の意義を深め、各業界の発展に貢献できれば、都市型の意味もさらに深まるだろう。