ヴィレッジヴァンガード(ヴィレヴァン)の業績が芳しくない。2024年5月期の決算では、売上高247億9900万円(前年同期比1.9%増)、営業損失9億1500万円、経常損失9億3400万円、純損失11億4400万円と、赤字になってしまった。「遊べる本屋」をコンセプトに、1986年の創業以来多店舗化し成長を続け、ショッピングセンターへの出店など出店形態も多様化し、現在は全国に308店を展開している。ただ近年は業績が望ましいものとはいえず、売上高も右肩下がりとなり、店舗数もピークの約400店から減少している。
この不調の背景については様々な指摘があるが、よく言われているのは、ショッピングセンターへの出店など店舗網を拡大したことにより、元々あったヴィレヴァンの良さ、つまり独特のセンスやいわゆる「サブカル」的な商品・売り場の特色が薄まってしまった、というものだ。
ヴィレッジヴァンガード下北沢店
(21年9月撮影)>
この指摘については、自分自身もなるほど一理あるなと思ってしまう。自分はかつてヴィレヴァンによく通っていたころがあったが、初めて店内に入ったときは独特の「何があるかわからない」感にとても魅力を感じたものだった。しかし最近、とくにショッピングセンターに出店しているヴィレヴァンの店舗を見ると、あのころに感じた魅力・感動といったものがそれほど感じられないのだ。自分自身のセンスが変わったのかもしれないが、店舗自体がきれいにまとまりすぎており、一種の「猥雑さ」とでも呼べるものが無くなってしまっているように感じる。そうした点を考えると、やはりショッピングセンターへの出店拡大という方針は、自らの強みであった独特の魅力を薄めてしまったのかもしれない。
しかし、自分はあえてここで異を唱えたい。ショッピングセンターへの出店という方針自体には、それとは別の価値があると言いたいのである。実は、自分が初めてヴィレヴァンに触れた時の店舗も、こうした地方のショッピングセンターに出店した店舗だったのだ。この初めての出会いは20年以上前になるが、当時地方に住んでいた自分にとっては、いわゆるサブカル的な書籍、アイテム、文化に触れられる貴重な場所がヴィレヴァンであったのだ。東京の下北沢に住んでいるような人々の文化の片鱗を、地方のショッピングセンターに通う人にも感じさせることができる、そうした一種の文化伝播の場として、ヴィレヴァンのショッピングセンター出店は意味があったのではないだろうか。営利企業である以上、業績が苦しければ事業の縮小など、それに対応する策を取らなければならないのは仕方ない。だが、これまで文化の伝播者とも言える、独自の地位を築いてきたヴィレッジヴァンガードに、自分はエールを送りたい。