電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第592回

Rapidus(株) 代表取締役社長 小池淳義氏


AIチップ特化の戦略推進
スピードはコストに勝つ

2024/9/13

Rapidus(株) 代表取締役社長 小池淳義氏
 ニッポン半導体復活に向けての戦略会社、Rapidus(株)(ラピダス)に国内外の関心が集まっている。「半導体を制するものは世界を制する」という声が高まっており、今や半導体産業は国家安全保障、サプライチェーン、政治経済のコアともいうべき存在だ。1990年代初頭までは、日本半導体企業の世界シェアは50%以上を獲得。しかし、現在は8~10%のシェアにとどまっている。これ以上の後退はできないと考えた自民党政権は、国家戦略半導体カンパニーともいうべき、ラピダスの設立に動いた。2022年8月のことである。もちろん、民間企業もこれに賛同し、トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行が出資することになった。北海道千歳市に世界最先端のロジック半導体(2nm以下)の大型量産工場建設を進めるラピダスの代表取締役社長、小池淳義氏に話を伺った。

―― 早稲田大学のご出身ですね。
 小池 私は広島県呉市の高校を出て、早稲田大学理工学部に進んだ。卒論はアルミ合金の単結晶の転移現象というものであった。その後、社会人になってから東北大学大学院で大見忠広教授のご指導のもと、博士号を取ることになる。

―― そして日立製作所に入社される。
 小池 日立の半導体のメッカといわれる武蔵工場に赴任し、ドライエッチングの開発に取り組んだ。日立では那珂工場の300mmウエハーの新ラインを立ち上げたのが、思い出に残ることである。

―― そしてトレセンティの社長に就任されます。
 小池 トレセンティテクノロジーズで取締役社長になり、06年にはサンディスク日本法人の代表取締役社長となった。そして米ウエスタンデジタルコーポレーションの上級副社長となり、東芝のメモリー半導体カンパニー(現キオクシア)と共闘することになる。

―― ラピダスの社長に就任して部下に訓示していることは。
 小池 一番大切なことは、将来に対してのビジョンだと言っている。5年先、10年先の社会を見て、半導体事業の未来形を作っていかなければならないからだ。目の前のことだけにとらわれ過ぎてはいけない。

―― 現在の人員体制については。
 小池 2年前に会社ができたときは、たった14人でのスタートであった。現在は500人を超える社員が就業しており、ほとんどが即戦力の人たちだ。平均年齢50歳というベテラン揃いであるが、彼らは日本が半導体世界一だった時代を知っている人たちだ。一方で、若い人たちも必要であり、25年は全国レベルで100人の新卒を採るつもりだ。

―― 「北海道バレー」という構想もありますね。
 小池 半導体関連企業が集積する九州シリコンアイランドとも緊密な関係を築いている。私自身も熊本には何回も訪問し、熊本大学で講演している。北海道バレーと言っているのは、ラピダスの進出により大きな経済効果が生まれることであり、半導体製造装置、半導体材料の企業進出が始まり、データセンターも誘致し、北海道の酪農にもAIを活用した新ビジネスが生まれる。

―― 建設工事の進捗状況は。
 小池 鹿島建設にメーン工事をお願いしているが、すさまじいスピードで進んでいる。基礎工事はすべて完了し、建屋も3~4割はできている。24年内に設備導入を開始し、25年4月にはテストランを計画している。私たちの社名と同じく超スピード、つまり「RAPID」で進めている。現在は開発棟であるが、その後ただちに量産工場へ移行していく。

―― AIチップのシリコンファンドリー特化を打ち出していますね。
 小池 そのとおりだ。データセンターであっても、日本のお家芸である自動車産業であってもすべてのコアはAIだ。パソコンやスマートフォンにもAIチップはどんどん搭載されていくだろう。シリコンバレーのAI企業とも提携を決めており、国内のAIベンチャーとも話を進めている。「スピードがコストに勝つ!」というTIME TO MARKETは半導体の世界にも通じる。ラピダスは、台湾企業をはるかに上回るスピードで勝負していく。低消費電力も徹底的に追求し、自動運転などの安全・安心を図り、AIの将来を切り開いていく。こうしたエコと安全は、まさしくニッポンの出番である。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
本紙2024年9月12日号1面 掲載

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