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第588回

リンテック(株) アドバンストマテリアルズ事業部門 事業企画部 田村桜子氏


テープから関連装置まで展開
次世代HBM向けの開発強化

2024/8/16

リンテック(株) アドバンストマテリアルズ事業部門 事業企画部 田村桜子氏
 リンテック(株)(東京都板橋区)は、半導体関連の特殊粘着テープで高いシェアを持っており、その関連装置も含めて、「Adwill(アドウィル)」というシリーズで展開している。そのほかにも、積層セラミックコンデンサー(MLCC)製造用の剥離フィルムなども提供している。今回、アドバンストマテリアルズ事業部門 事業企画部の田村桜子氏に事業動向などについてお話を伺った。

―― 製品ラインアップについて。
 田村 ラインアップは、主に間接材料と直接材料に分けられる。間接材料には、よく知られているバックグラインド(BG)プロセス向けとダイシングプロセス向けがある。
 一方、半導体パッケージの中に残る直接材料としては、ダイシングダイボンディングテープとチップ裏面保護テープをラインアップしている。また、テープ単体だけでなく、テープを貼り付けたり、剥がしたりするための装置も開発・提供していることが半導体関連事業における当社の大きな強みとなっている。

―― 製品のシェアは。
 田村 当社としての推計になるが、BGテープが約25%、ダイシングテープが40%程度と見ている。また、ダイシングダイボンディングテープは5%以下で少ないが、チップ裏面保護テープは90%以上のシェアを獲得していると見ている。現状では間接材料であるBGテープとダイシングテープのシェアが高く、メーンの製品になっているが、直接材料はチップ裏面保護テープ以外にも力を入れて、マーケットを拡大していきたい。

―― 5月にはバンプ保護フィルムも発売しました。
 田村 近年ではWLCSPのパッケージング技術が多く採用されており、そこでは基板接続用の電極として突起状のバンプが形成されている。熱による変形などの負荷がかかると、電極の基部にクラックが生じてしまうことがあるが、今回の新製品は突起状の電極を樹脂で保護することでクラックを抑制し、半導体チップの耐久性を向上させる。同製品は温度によって樹脂粘度が変化する設計になっており、バンプを形成した回路面に加熱しながら貼り付けると、空気が入ることなく凹凸面に追従させることができる。また、BG工程の際には、研削水や研削屑の浸入による回路面の汚染を防ぐ機能も兼ね備えている。

―― 足元の業績は。
 田村 2023年度のアドバンストマテリアルズ事業の売上高は600億円で、23年秋ごろから需要が徐々に回復したことに加え、円安による上ぶれの影響を受けた。売り上げのうち、半導体関連テープ事業が5割強、その関連装置が2~3割となっており、それ以外はMLCC関連事業などが占める。

―― 海外顧客が多い印象です。
 田村 3年ほど前までは台湾の顧客が最も多かったが、最近は中国の顧客が増えており、現在は最も多くなっている。日本の顧客は10%程度となっており、それ以外に韓国の顧客もいる。

―― 生産拠点は。
 田村 日本国内では、群馬県にある吾妻工場をメーンに全種類のテープを生産している。海外では、韓国・忠清北道に拠点があり、BGテープとダイシングテープなどを生産している。台湾拠点では主に裁断加工を行っている。
 また、装置の設計・開発については埼玉県にある伊奈テクノロジーセンターで行っている。24年1月には吾妻工場に新しい設備の導入を完了させており、増産も加速していく計画だ。

―― 注力製品について。
 田村 HBM製造プロセス向けのテープとその関連装置の開発・提案に注力している。装置に関しては大口の受注があり、テープについても受注が増えている。難しいのはHBMの世代によってプロセスが異なり、要求されるテープの性能が違うため、それに応じて開発する必要がある点だ。今後も需要が伸びると期待しているため、現在最も力を入れている分野となる。

―― 今後の事業目標は。
 田村 同事業部門の24年度売上高は679億円の見通しであり、前年比では増収になると予想している。中・長期的にはBGテープの拡販および関連装置の供給体制を強化し、26年度の売上高は23年度比28%増の765億円を目指す。



(聞き手・嚴智鎬記者)
本紙2024年8月15日号8面 掲載

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