韓国人の日本への就職気運が円安の進行により弱まっている。すでに就職している韓国人の悩みは深まり、最近、オンライン上の日本就業関連のコミュニティーには「年俸額にメリットがなくなり、日本行きを諦めている」との呟きが少なくない。
渋谷のスクランブル交差点は外国人旅行者で
賑わう(写真は23年12月撮影)
韓国産業人力公団(蔚山広域市中区)の資料によれば、日本就業者(研修および斡旋就業含む)数は2019年の通年2469人から22年は1154人、23年は1293人と減ってきており、韓国人の日本就業熱は冷めていることが分かる。専門家らはこうした現状の背景について、円安の持続にあると分析する。韓国銀行によると、年平均のウォン・円為替の推移は、20年に100円あたり1105.07ウォンを記録した後、円安が急速に進んでいる。日本で年俸400万円を提示された会社員の場合、20年には4420万ウォンを稼いだが、24年1~4月の平均為替に換算すると、4年前に比べて19.2%減の3571万ウォンとなる水準だ。23年に日本企業全体の平均初任給の引き上げ率は2.84%であったそうだが、韓国人が日本に就業すれば、円安の影響で実際の取得額は毎年目減りするという構造になっている。日本では、先日も日銀が利上げを決めたが、為替はどう推移していくか。日本のIT業界は海外の人材を積極的に採用しているが、円安に伴い実際の所得が変動すれば、日本で就業することにためらいも出るだろう。
いまからちょうど40年前の1985年2月、筆者は台湾桃園国際空港から成田空港に初めて降り立った。のどが渇き、生まれて初めて見る自動販売機の牛乳を飲もうとした瞬間、「飲んではいけない」と思い直し、空港内のトイレに行き、恥ずかしさを覚えながらも洗面所の水をそっと飲んだ記憶がある。というのも、その自販機の牛乳の価格を当時の韓国ウォンに換算したら、とてつもなく高価で飲めなかったのだ。その後、成田空港のトイレの水は飲んでも問題はないことが分かって安堵したものの、交通費や生活費が高すぎて移動や食事がまともにできなかった。当時の東京とソウルの物価の差はおおよそ3.5~4倍で、東京のほうが高かった。
日本政府観光局(JNTO)が発表した24年5月の訪日外国人数304万100人のうち、国・地域別では韓国からが73万8800人と断トツだった。先般、日本に足を運んだ際、韓国の若者に訪日の理由を聞いたところ「ソウルに比べて物価が安いうえ、食べ物や商品の品質がとても良く、特に、日本人のサービス精神や親切さにも感動する」と満足気に語っていた。24年のソウルは、東京に比べて交通費を除いたすべての物価が20%程度高い。交通費も円安により、ほぼ同水準になりつつある。韓国はいまや日本よりも高コスト、そういう時代になっているのである。