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第587回

KDDI(株) ビジネス事業本部 グループ戦略本部 コネクティビティ・DC企画部長 柳澤健之氏


DCで30年度に売上2000億円目標
大規模計算基盤整備に1000億円投資

2024/8/9

KDDI(株) ビジネス事業本部 グループ戦略本部 コネクティビティ・DC企画部長 柳澤健之氏
 大手通信事業者のKDDI(株)(東京都千代田区)は、データセンター(DC)に関する事業も長年展開しており、世界でもトップクラスの実績を誇る。また直近はAI DCの整備に向けた投資も進めている。DC関連の取り組みについて、ビジネス事業本部 グループ戦略本部 コネクティビティ・DC企画部長の柳澤健之氏に話を伺った。

―― 貴社のDC事業の概要から伺います。
 柳澤 当社のDC事業は「Telehouse」というブランド名で約35年にわたる歴史がある。日本だけでなく、欧州、アジア、北米とグローバルで事業を展開しており、現在10カ国以上で、45拠点以上(延べ床面積56万m²以上)のDCを運営している。特に、コネクティビティDC(クラウド、インターネットエクスチェンジ、通信事業者などの相互接続拠点)に注力しており、Telehouseは、相互接続数において世界4位、通信事業者でみると世界トップを誇る。

―― 主要拠点について教えて下さい。
4月から「Telehouse カナダ」の事業も開始
4月から「Telehouse カナダ」の事業も開始
 柳澤 相互接続数で世界最大を誇る「Telehouse ロンドン」やフランスで最大の「Telehouse パリ」などの拡張のほか、2023年にタイ・バンコクで新たな拠点が竣工した。また、カナダのアライド プロパティーズ リートからDC事業を23年8月に譲り受け、24年4月から「Telehouse カナダ」として事業を開始するなど、拠点整備のペースを近年拡大している。

―― AI関連の取り組みも強化されています。
 柳澤 全社ベースでAI関連が大きなテーマとなっており、5月に発表した「WAKONX」(ワコンクロス)を強化する役割を担っている。WAKONXは、様々なパートナーと共創して、その業界に最適なネットワーク、データの蓄積・融合・分析、最適化されたAIやソフトウエアを構築してソリューションとして提供するもので、法人企業はこのWAKONXを利用することで、本業に専念していただける。これにより投資を抑制でき、付加価値を生む競争領域へ投資をシフトすることができる。現在、物流、モビリティー、リテール、放送、スマートシティなどの領域で協業の動きが進んでいる。こうした分野以外にも様々な可能性があると考えており、例えば製造業向けのWAKONXの構築に向けて、ファクトリーオートメーション関連の企業と共創するような可能性も十分にあると考えている。こうした取り組みにご興味がある方はぜひお話をさせていただきたい。

―― AI計算基盤の整備も進めておられますね。
 柳澤 生成AI開発のための大規模計算基盤の整備に、4年間で1000億円規模の投資を行うことを4月に発表し、経済産業省から経済安全保障推進法に基づくクラウドプログラムの供給確保計画として認定も受けた。当社のグループ会社で、LLM(大規模言語モデル)の社会実装を進める(株)ELYZAの計算基盤としての活用も検討している。こうした計算基盤がWAKONXのデータ層を支える基盤にもなる。また6月に発表したとおり、シャープ(株)の堺工場跡地にAI DCを構築し、早期に稼働開始することを目指して協議を開始した。

―― 今後のDC事業の方向性について。
 柳澤 当社が強みを有するコネクティビティDC関連を中心に、まずは欧州での持続的成長、東南アジアといった成長市場の捕捉、Telehouseカナダが始動した北米でのさらなる拡大など、海外市場での事業成長を図っていく。日本についても安定的な成長を目指すとともに、AI関連などの取り組みを進めていく。こうした拡大と合わせて、DCの環境対策も重要なテーマだと捉えており、25年度までに当社のDCで使用している電力をすべて再エネ由来にする予定だ。そして事業面では23年度1210億円だったDC事業の売り上げを30年度に2000億円にすることを目指す。


(聞き手・副編集長 浮島哲志)
本紙2024年8月8日号1面 掲載

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