電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第590回

「ウソのない製品を作れ!」を合言葉に売上100億円を目指す!!


最先端の保有設備340台を誇る日本精密電子の一住連努社長の言葉

2024/8/2

 横浜市泉区にあるユニークな半導体設備関連のカンパニーをご存知であろうか。そのカンパニーは、5軸マシニングセンター22台、マシニングセンター88台、NC旋盤60台、三次元測定機25台、立型旋盤7台など最新鋭の保有設備340台を備えているのだ。東京精密、ミツトヨなどの高額機械であり、さらにクリーンルーム11室を持っているというすさまじさである。

 そのカンパニーの名前は、日本精密電子という。先ごろ、熊本県荒尾市に2カ所目となる工場用地2万m²を確保し、17億円を投じてまずは延べ床面積4000m²(最終目標1万2000m²)の新工場を建設し、24時間稼働可能な横型マシニングセンター8台によるFMSラインと立型NC旋盤4台の自動化ラインを計画している。

 「鹿児島県出水市の農家に生まれ、県立出水高校を出て東京都内の大学で学び、伊藤忠商事系の先物取引会社に就職し、一所懸命に働きに働いた。しかして、やはり何としても自分の会社を持ちたいとの思いから、1986年に起業したのだ」

日本精密電子 代表取締役社長の一住連努氏
日本精密電子 代表取締役社長の一住連努氏
 こう語るのは、日本精密電子にあって代表取締役社長として陣頭指揮を執る一住連(いちのしめ)努氏である。同氏は、“モノづくり”精神は測定に始まり測定で終わる、そして“品質管理システムの技術”にあり、と考えており、それがお客様に対する誠意である、と言い切っているのだ。

 「小さなアパートから起業したが、健気に頑張る妻を幸せにするためには、どうあっても成長の見込める半導体など電子デバイス分野でのロードマップを見つけるしかないと思った。創業時は父ちゃん、母ちゃんで夜中の2時、3時まで働いた。世に出るきっかけは、富山県の北陸電気工業の抵抗器の治工具を作ることに成功したからだ。これは今でも忘れない」(一住連氏)

 その後、大手の真空ポンプメーカーの荏原製作所との出会いがあり、オゾナイザーという殺菌器の部品量産を受注する。そして、1992~1993年にかけて訪れた半導体の6インチウエハーの時代。荏原が世界ステージに出ていくCMP装置の機構部品を引き受けることで、実績を作っていく。ちなみに、一住連氏は、「リテーナーリング表面の鏡面加工仕上げ処理」を発明し、CMP装置の慣らし運転の短縮に貢献し、また量産加工の垂直立ち上げに成功する。そしてまた特許まで獲ってしまったのだ。

 「最近では、日本勢が強みを持つ一般電子部品分野向けも拡大している。とりわけ、積層セラミックコンデンサー大手メーカーの装置部品の信頼を得ている。CMP装置の荏原向けは、やはりメーンの仕事になるが、その他の日本の半導体製造装置メーカーとの取引も広がっている」(一住連氏)

 あらゆるカスタマーの高精度品のニーズに応えるべく、20年以上も前からいち早く、精密加工工場内および検査測定室内を365日の昼夜を問わず、1年間を通して22℃±1℃の恒温管理を行っているという。また工場内、検査室内(クリーンルーム・クラス1000)を同一温度で管理することで、どの加工工程であっても「製品の温度ならし」によるロスタイムをなくして、スピーディーな評価測定も可能にしているのだ。

 こうした「全加工製品モニタリングシステム」の特徴は、次工程に進む時に必ず検査室がその工程ごとの検査測定を行い、検査合格済みという確認サインがなければ、次工程には持ち込めないというシステムの確立にあるという。総じていえば、不良品は絶対に納めないという確固たる精神があるのだ。

 「部下たちに常々言っていることは、ウソのない製品を作れ!である。これがある限り、お客様の信頼が揺らぐことはない。今の時代にあっては、人材育成も重要であるが、量産を手がけないと人は育たない、と思っている。そして、ウチの誰がやっても、最高に良いものを作れるという体制が必要なのだ。」(一住連氏)

 「父ちゃん、母ちゃん」で立ち上げた小さな会社は、今や売り上げ30億円乗せが確実という状況になっている。そして、海外事業部を作り、アメリカ、中国、台湾にも進出!という壮大な夢も持っている。中長期的には売り上げ100億円を目指したいという同社の活躍ぶりからは、今後も目を離すことはできない。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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