電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第589回

「日本企業と提携し、画期的なシリコンファンドリーを立ち上げてみせる!」


仙台エリアに舞い降りた台湾半導体企業、JSMCの呉元雄社長が語る言葉

2024/7/26

 「NEDIA Day東北ふるかわ2024」が2024年7月16日(火)にアルプスアルパインの仙台開発センター(宮城県古川市)で盛大に開催された。200人を超える人たちが押し寄せてきたことで満席満杯の状況であり、いやがうえにもテンションは上がっていたのだ。

 このカンファレンスは、日本電子デバイス産業協会(齋藤昇三会長)が展開する大型イベントの一環として行われたものである。開会挨拶は、東北NEDIA代表であり、東北大学未来科学技術共同研究センターのシニアリサーチ・フェロー 川添良幸氏がスピーチされた。また来賓を代表して、全国知事会の会長であり国内外に著名な宮城県知事の村井嘉浩氏が挨拶をされた。村井氏はいつものように元気いっぱいでこう述べられた。

 「東北エリアにおける半導体産業の進展は目覚ましいものがある。とりわけ、エポックメーキングであるのは、台湾のシリコンファンドリー大手であるPSMCが進出したことであり、大型投資が断行されるのだ。このインパクトは宮城県下だけでなく、東北全体にも波及していくだろう。重要なことは半導体人材の育成であり、宮城県も全力を挙げるが、政府にも大きな支援をしていただくよう呼び掛けたい」

宮城県の村井嘉浩知事
宮城県の村井嘉浩知事
 講演は東北大学未来科学技術共同研究センターの松岡隆志氏(東北大学名誉教授)による「窒化物半導体の結晶成長とその光・電子デバイス応用」、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング白石蔵王テクノロジーセンターのLDセクター長の古嶋裕司氏による「ソニーの半導体レーザ事業の歴史と展望」など意欲的な内容が観衆の関心を誘っていたのだ。

 筆者も「東北シリコンコリドーの時代がやってきた!」という内容で講演させていただいた。そしてまた、出色であったのは台湾のシリコンファンドリー大手であるPSMC(パワーチップ)とSBI証券グループの合弁会社であるJSMCホールディングの代表取締役社長である呉元雄氏の講演であった。

 「PSMCは台湾で第3位、世界で第7位のピュアシリコンファンドリー企業である。メモリーとロジックの両方ができる稀有な存在なのだ。宮城に進出できたことは誠にもって嬉しいと思っている」

 呉氏は冒頭にこう挨拶されたうえで何ゆえに宮城をセレクトしたかということについても触れたのだ。用地面積は15万m²以上を希望していたが、宮城県大衡村に18.85万m²の用地が確保できたことが大きいとしていた。また人材という点では、東北エリアは潤沢にあるわけであり、東北大学という半導体のメッカともいうべき存在が重要なポイントにもなったともいう。半導体製造に必要な「水」もまったく問題ないと述べられた。

 「2031年までに300mmウエハーで月産4万枚のファブを立ち上げる予定であり、第1期では月産1万枚から動かしていく。28nm~55nmのプロセスで立ち上げるが、将来はもう少し上のバージョンの微細加工にもっていく計画もある。そして何よりも強みを持つのは「WOW」という画期的な技術を使うことによって、DRAMの消費電力を1/10も削減できることなのだ」(呉氏)

 立ち上げていくJSMCの工場は①ロジック/ロジック、②ロジック/メモリー、③メモリー/メモリーという3つの組み合わせが可能になるという大きな特徴をもつ。そしてまた、3D積層チップレットを使うことによって2.5Dチップレットに対し、圧倒的な特性を発揮するともいうのだ。現段階は、この積層については4層までできるが将来は8層まで考えているというからして、まさに驚きなのである。

 講演の最後になって、呉社長は観衆に向かって強い声で次のように呼び掛けたのである。

 「日本企業は優秀であり、東北エリアにはシリコンウエハー最大手の信越化学の工場(信越半導体)もある。半導体製造装置国内最大手の東京エレクトロンは宮城と奥州に量産拠点を構えている。半導体を作ることに対し、非常に良い環境なのだ。そして重要なことは、日本のパートナーをいっぱい探したいということだ。私たちと一緒に協業することでお互いに高め合っていくという関係論がとても大切なことだ」


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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