円安がインバウンドの消費を喚起している、という話は各所から出ている。観光庁が公表した2024年1~3月期の旅行消費額は1兆7505億円となり、四半期では過去最高の数字となった。またインバウンド消費だけではなく、円安を背景に国内マンションなど、海外からの不動産投資が盛んになっているとも言われている。そうした中、意外なものの需要が高まっているのを最近見かけた。
自分は数世代前の家庭用ゲーム、いわゆるレトロゲームが好きで、そうしたゲームを扱う秋葉原などのレトロゲームショップに足を運ぶことがよくあるのだが、先日そこで印象的な光景を見た。訪日客と思われる人が、店内のガラスケースに入っているレトロゲームを両手に抱えるほど購入していたのだ。近年、レトロゲームはこうしたインバウンド需要もあってかかなり値上がりしており、1本数万円するソフトも珍しくない。そうしたソフトを手あたり次第買っていく訪日客の姿に、自分はかなり驚かされた。また、そこまで目立つものではなくとも、こうした店舗で外国人の姿を見ることは以前と比べるとかなり多くなった。
かつて外国人観光客を集めていた
秋葉原の家電エリアだが、
今は集客の中心が変わったように見える
日本のサブカルチャーグッズに対するインバウンド需要は、ゲームにとどまらず、例えばフィギュアやプラモデルなどでも大きくなっているようだ。秋葉原中央通り沿いに21年に開業した「ボークス秋葉原ホビー天国2」では、外国人らしき客が結構な頻度で出入りしている様子が見られる。かつて秋葉原において「爆買い」の対象となっていたのは主にラオックスやオノデンなどの家電だったが、肌感覚で言えばインバウンドの人流も家電エリアからサブカルチャーのエリアに移ってきているように見える。
かつては美術の世界でも「ジャポニズム」として、日本の浮世絵がブームとなった時期があったが、その背景には鎖国が終わり、海外との貿易が活発になる中、浮世絵が海外に流れ認知されたということがある。こうした形でレトロゲームなどが海外の人々に買われるのは感慨深くはあるが、同時に物品の海外流出ということでもあると思い、一抹の寂しさも感じた。