電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第586回

エヌビディアの株式時価総額はマイクロソフトを抜いて世界トップ!!


半導体が主役の時代到来、ポイントはAIデータセンタにある

2024/7/5

エヌビディアは株式時価総額で一時世界トップに(写真:生成AI用半導体のA100)
エヌビディアは株式時価総額で一時世界トップに(写真:生成AI用半導体のA100)
 2024年6月25日のことである。米国半導体メーカー大手のエヌビディアの株式時価総額は、ついに世界トップの3兆3400億ドル(527兆円)に躍り出たのだ。マイクロソフトを抜き去り、スマホの王者アップル、今や失楽園に向かっている感のあるテスラをもなぎ倒してしまった。我が国の全GDPは約600兆円であるが、それに迫る勢いであり、一企業の株式時価総額がGDP世界ランク4位の日本に並びかける、というのはまさにサプライズ!でしかない。

 エヌビディアは、GPUという半導体を1999年に開発したビジュアルコンピューティングテクノロジーの世界的リーダー企業である。GPUはデスクトップPC、ワークステーション、ゲームなどにおいて、インタラクティブなグラフィスティックスを作り出すプロセッサーである。近年はディープランニングをはじめとしたAI用半導体製品を手がける「AIコンピューティング企業」へと変貌を告げ、圧倒的な存在感を放っている。

 2017年当時には1兆円程度の売り上げであったが、2021年には3兆円以上となり、そしてなんと2024年には15兆円以上が予想されている。これまで半導体トップのインテルを抜き去り、韓国サムスンに大差をつける存在にまでなってしまうのだ。

 そしてまたエヌビディアは純正なファブレス企業であり、この生産委託のほとんどを担っているのが台湾のTSMCである。これがために、TSMCも伴走して売り上げを急増させており、こちらも2024年生産額は12兆~13兆円程度が見込まれるというのだから、時代は明らかに変わったのだ。

 ファブレスとファンドリーの時代が到来したとはよく言われることであるが、工場のない半導体企業が世界トップとなり、また生産委託しかやらない半導体企業が事実上の世界チャンピオン!! これを認識した時に、これまでの業界の常識はことごとく打ち破られるといっても過言ではないだろう。

 AIデータセンターは凄まじい勢いで建設されている。そしてGPU、CPU、FPGA、ASICを搭載したAIサーバーの出荷台数は2023年に約40%増となり120万台を越えてきた。今後も40~50%増で伸びるのは間違いないと予想されており、エヌビディアの爆裂成長は今後も続くと見る向きは多いのだ。

 データセンター向けのAI半導体については、今後4年間で年率70%成長という、とんでもない伸びが見込まれている。この分野のエヌビディアの市場シェアは90%以上とも言われており、まさに独占状態なのである。

 ちなみに、マイクロソフト、アップル、グーグルなどのIT大手は日本国内に4兆~5兆円を投じて、データセンターを新設する計画であり、これを見込んでのことか、エヌビディアはなんと日本に研究拠点設置を打ち出している。また日本国内でのAI人材育成にも躍起となっている。こうした事情を考えれば、東京大学、東北大学、京都大学、大阪大学、九州大学などにおけるAI人材の教育強化は待ったなしになるのだ。

 次世代自動車向けの最先端半導体という世界においても、エヌビディアの強さは際立っている。とりわけコネクテッドカーと呼ばれるAI搭載の次世代カーにはエヌビディアの半導体がどうしても必要になってくる。

 筆者の親しくする著名アナリストはため息をついて、このエヌビディアの活躍についてこうコメントする。

 「かつては、鉄の時代ということが言われ、また、石油化学の時代、繊維の時代という歴史もあった。しかして、エヌビディアというスーパーヒーローの登場は、世界の主役が半導体になったことを意味するのだ。あな恐ろしや、とは誠にもってこのことであろう」


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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