商業施設新聞
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No.492

主役への道


高橋 直也

2015/2/3

 先日、ある駅のホームに修学旅行と思しき学生数人がいた。その中の男子生徒が携帯電話でこんな会話をしていた。「今は……おとまち? ごとまち? 読み方わかんない。とにかく上野と秋葉原の間の駅にいる。え? 駅の周り? 何もないけど」。今回は初めての人には読めない『御徒町(おかちまち)』の話である。

 御徒町は「宝石」「職人」「吉池」「多慶屋」など様々な施設、特徴を持つ。駅から離れれば細い路地が多く、老舗の飲食店も点在する渋い町だ。

 ところが、「上野駅」「秋葉原駅」という日本有数の知名度を誇る駅に挟まれているため影が薄い。アメ横に用事がある人も大抵の人は上野駅から行く。改札出口からの距離は御徒町駅からの方が近いのに。
 御徒町駅から徒歩2~3分の場所に松坂屋上野店があるが、「上野店」である。上野駅からは10分くらいかかるのに「上野店」だ。

 そういう筆者も御徒町に住んでいるが、「家どこ?」と聞かれたら「……上野」と答えている。「御徒町」と言うと、相手も「へー」と言って会話が終わることもしばしば。一度「埼玉だっけ?」と言われたことがある。実力があるのに決して主役にはなれない町。それが御徒町である。

 そんな御徒町で今、そこそこ開発が進んでいる。名誉挽回のため、いざ記す。

 まずは弊社、産業タイムズ社の本社跡地。2014年後半までは、駅から徒歩5分ほどの敷地にクロアチア国旗色のビルが建っていたが、今年1月に通りかかったときには更地になっていた。事務所と店舗が入居するビルを建設するようだ。
 さらに本社跡地から数十mの敷地ではビジネスホテルを開発中だ。御徒町にだって泊まる人はいるのだ。

 大型案件だってある。三洋電機東京ビル跡地では、オリックスがオフィスビルを開発している。駅近くでは松坂屋上野店南館が改築を進めている。完成後はパルコとTOHOシネマズが出店する。また、松坂屋上野店南館の裏では小規模ながら商業施設を開発するようだ。

「御徒町駅―秋葉原駅間の高架下。かなりきれいになった」
「御徒町駅―秋葉原駅間の高架下。
かなりきれいになった」
 長らくエリアの課題だった高架下の環境改善も進んでいる。御徒町駅―秋葉原駅間の高架下は暗く、清潔感がなく、周辺に勤務する女性は帰宅時に高架下を避けて駅まで行ったという。ここ数年は開発が進んでおり、14年12月には御徒町ラーメン横丁が移転増床した。中長期的にはJRグループも高架下の開発を進めていくようで、環境の改善は続いていくだろう。

 あとは街の象徴が必要だ。上野でいうアメ横や上野公園のように、御徒町の代名詞となるものが欲しい。多慶屋や吉池は、住民的にはよく利用するが来街者はあまり使わないだろう。

 すぐにできるのは新しくできるパルコの名称を「パルコ御徒町」にすることだが……御徒町と名が付くと老舗が集まる施設のようなイメージがする。主役への道のりは遠い。
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