電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第580回

ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(株) 代表取締役社長 山口宜洋氏


脳の機能持つセンサー開発
長崎ファブ5で生産能力増強

2024/6/21

ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(株) 代表取締役社長 山口宜洋氏
 ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(株)(熊本県菊陽町)は、ソニーセミコンダクタソリューションズグループにあって主に半導体の生産を担当している。“人間の眼”にあたるCMOSイメージセンサーの分野で、世界トップシェアを持つソニーは、生産拡大に向けてひた走っている。今回、代表取締役社長の山口宜洋氏に、最近のCMOSイメージセンサーの状況と未来像、スマート化に貢献する役割、さらには設備投資の状況などについて話を伺った。

―― 各工場の役割分担について。
 山口 スマートフォンなどモバイル向けイメージセンサーの最大の開発・量産拠点は長崎TECであり、先ごろ「ファブ5」が立ち上がり、生産能力を大幅に拡大する体制が整った。長崎TECのファブ5は、敷地スペースのほぼ半分を占めるほどの大型工場だ。2層のクリーンルームを備え、オール免震構造であり、30%の省エネルギーを図り、水の再利用の割合も世界トップレベルといってよいだろう。本社の熊本TECはデジカメのほか、車載、産機、セキュリティーなど様々な用途に使われる非常にユニークなイメージセンサーの開発・量産を担当している。大分TEC、山形TECもモバイル向けを量産しており、この4工場はすべて300mmウエハーを採用している。そのほかには、アナログデバイスを生産する鹿児島TEC、白石蔵王TECがある。

―― 合志に新工場用地を確保しましたね。
 山口 モバイル向けイメージセンサーは、長期視点で将来の需要増に備える必要があり、熊本の合志に37万m²の新工場用地を取得し、建設リードタイムと労働力の確保を要する建屋建設を着工した。装置搬入などライン設営に向けた投資は、今後、市況を見極めながら慎重に判断していく。最近の業界傾向としては、大型工場を一気に建設し、需要の動向に合わせて設備を入れていくことが多い。この時代にあって、2~3年先を正確に予想することが難しいためだ。

―― TSMCの進出については。
 山口 我々のイメージセンサーはロジックとセンサーを積層構造にして作るが、熊本TECの近接にTSMCの新拠点が立ち上がることで、安定的にロジックウエハーの調達が期待できる。サプライチェーンは重要であり、お客様にも安心していただける。

―― 今後のイメージセンサーの可能性は。
 山口 自動車向けにも期待はあるが、EVなどのエコカー、完全自動走行運転などについては、もう少し時間がかかるとみており、ここはじっくりと構えたい。すでに世界のトップOEM20社の大部分とは、ロードマップを共有し、商談を進めている。

―― イメージセンサーとAIについて。
 山口 イメージセンサーは人間の“眼”にあたるが、ここに“脳”をつけたいと思っている。センサーがとらえた画像データは、すべてアプリケーションプロセッサーなどで後段処理したあと、クラウドに上がるため、データ量は増大するばかりだ。そこで、センサーにAIを載せて必要データのみを抽出させる。つまりは、工場や社会でスマート化が加速する中でAIが判断するセンサーだ。それ以外にも波長などの特性を捉え、似て非なるものを区別するためのセンサーなど幅広く手がけていく。

―― 九州半導体・デジタルイノベーション協議会(SIIQ)の会長に就任されましたね。
 山口 SIIQは2023年4月にこれまでのコンソーシアムから法人化し、初代会長を拝命した。ロジスティクスや商社、人材派遣さらには銀行など周辺企業の入会も相次ぎ、現在の会員は20年度比で約40%増の約300社に増えている。人材育成とサプライチェーン強靭化の二本柱で活動しており、会員企業の皆様と力を合わせ、〝新生シリコンアイランド九州〟を目指していきたい。


(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
本紙2024年6月20日号1面 掲載

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