中国・無錫市に本拠を置くインディーマイクロ(indiemicro、英迪芯微電子科技)は、自動車のインテリアとエクステリアの照明を制御するSoCや車内で使われる小型モーター制御ICなど、車載半導体を手がけるファブレス企業だ。同社の庄健董事長にこれまでの開発や今後の事業展開について伺った。
―― まずご経歴から。
庄 私は南京の東南大学で自動化技術を専攻し、卒業後の1999年に旧日立製作所の蘇州工場(半導体の組立・検査)に就職した。そのときに日本の日立製作所の工場に派遣され、2年かけて家電用半導体の設計や製品カスタマイズなどの技術研修を受けた。これが今のビジネスの原点となった。
中国に帰国後、上海にある日立製作所の販売会社や蘇州工場内の設計センターに配属され、主に中国の大手家電メーカーのハイアール(海爾)やハイセンス(海信)など向けに白物家電に搭載する半導体の設計や技術系のフィールドエンジニアなどの業務を担当した。その後、蘇州工場は2008年にルネサスに統合された。08年に米アトメルの上海法人に転職し、主に半導体の販売マーケティングを担当し、最後は中国地区マネージャーまで昇進した。その後、アトメルが米マイクロチップに買収されたのを機に同社を退職し、17年にインディーマイクロを起業した。
―― 会社の事業紹介を。
庄 当社は車載半導体のファブレス企業で、無錫市に本社、上海市の閔行区と蘇州工業園区に開発拠点がある。従業員数は合計約180人。最初に製品化したのは血糖値計測機器用のSoCだったが、今は医療用半導体の売上高は全体の5%で、車載半導体が95%を占める。売上高は21年の約6000万元から22年に1.5億元へ倍増し、23年は5億元へ急成長した。中国の新エネルギー車やスマートカーの市場が急拡大した波に乗って業績が右肩上がりで成長を続けている。24年の売上高は7億元以上を見込む。
―― 製品について。
庄 現在、最も販売額が伸びていて販売額も大きいのが、自動車のテールランプを流水効果のようなアニメーション表示させるSoCだ。複数個のLEDランプを単純に同時オン/オフするのではなく、LEDの点灯タイミングを細かく制御することでアニメーション表示を可能にしている。車内のエアコンの送風口の角度を電動制御したり、サンルーフの開閉を制御したりするのに使用される小型モーターの駆動ICもヒット商品となっている。
―― エンドユーザーは。
庄 中国の自動車メーカーが全体の70%、海外の自動車メーカーは30%という比率になっている。用途別では、照明用半導体が全体の65%、小型モーター用が30%、残りが医療用である。特に中国の新興EVメーカー向けの販売が急増している。海外の自動車メーカーでは米国企業向けが多い。
―― 半導体生産の委託体制は。
庄 当社は300mmと200mmで製品を設計し、半導体の製造は外部の企業に委託している。主な委託先は独X-FAB、グローバルファウンドリーズのシンガポール拠点、中国の華虹半導体だ。X-FABは車載半導体の製造を得意とし、華虹半導体は上海と無錫に工場があって当社の開発拠点と一致している。これらのファンドリーに年間約1万枚以上(200mm換算)を生産委託している。現在は200mmでの製品の方がやや多いが、300mmでの設計が増加傾向にあり、近く逆転する見通しだ。組立・検査は、長電科技、華天科技、ATX(旧ASE蘇州工場)に委託している。
―― 日本でのビジネス展開について教えて下さい。
庄 中国の車載半導体ファブレスとしては、IGBTやMOSFETなどのパワー半導体分野を除くと、当社は中国のトップカンパニーの位置にいる。車載半導体の販売実績は中国と米国市場では多いものの、日欧の自動車メーカー向けはまだ少ない。私は以前にルネサスで設計していたので、日本とのビジネスのことはある程度分かっているつもりだが、日本市場の開拓に際しては日本の顧客の考えをより理解する必要がある。日本の代理店との提携なども含め、日本でのビジネスサポート体制を構築し、日本の顧客に向けた製品カスタマイズと車載用半導体の受託設計の仕事を増やしていきたいと考えている。
(聞き手・上海支局長 黒政典善)
本紙2024年6月13日号4面 掲載