電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第569回

コーニングジャパン(株)/コーニングインターナショナル(株) 代表取締役社長 古川貴浩氏


初めて日本法人2社を統括
全社員連携で「モアコーニング」推進

2024/3/29

コーニングジャパン(株)/コーニングインターナショナル(株) 代表取締役社長 古川貴浩氏
 ディスプレーのガラス基板のサプライヤーとしてトップシェアを誇るコーニング。化学強化ガラスの「ゴリラガラス」はスマートフォン(スマホ)のカバーガラスを代表する製品となっている。2023年3月にコーニングジャパン(株)(CJKK)、11月にコーニングインターナショナル(株)(CIKK)の社長に就任した古川貴浩氏に、日本での事業展開や抱負などを伺った。

―― まずはご略歴からお願いします。
 古川 22年ほど前にコーニングに入社し、静岡工場でエンジニアとしてガラスの溶融工程の改善や生産ライン立ち上げ業務に従事した。当時は国内外で液晶パネル工場の建設が盛んであり、当社の国内外のガラス基板製造ラインも増設ラッシュだった。その後、東京本社でマーケティングや企画、国内顧客への営業職などに就き、米本社で新製品の立ち上げや営業責任者などを務め、23年3月にCJKK、11月にCIKKの現職に就いた。
 コーニングは、①ディスプレー、②オプティカルコミュニケーション、③オートモーティブ、④モバイルコンシューマエレクトロニクス、⑤ライフサイエンスの5つを主要事業としている。日本では、①をCJKKが手がけ、ガラス基板の製造・販売を担っている。これ以外の4事業はCIKKが担っている。
 米本社の方針で、1つの製品により多くのコーニング製品を採用してもらうための「モアコーニング」の戦略を進めており、別々だった両社のトップを一人で統括することとなった。社員同士の情報交換を密にすべく、両社や部門を横断する取り組みを進めている。

―― 具体的には。
 古川 例えばスマホ表面のカバーガラスや裏面ガラス、カメラレンズカバーとしても採用されているゴリラガラスのように、「モアコーニング」を他の分野や製品、お客様でも浸透させるだけでなく、新しいアプリケーションも発掘していく。これまでは各社、各部門での縦割りの事業展開であり、情報共有や社員同士のコミュニケーションも取れていなかったため、同じお客様に対して製品ごとに個々にアプローチしていた。
 これに対し、業績の月次報告会議において工場も含め両社の全社員が参加でき、売り上げや事業状況などをシェアできるようにした。新規技術についても四半期に1回以上は各事業部の代表者間で共有できる機会を設けている。こういった仕組みを作ったことで、すでに社員間で横の連携ができており、他部門同士で営業に回ったり、お客様に提案したりする活動が活発化している。
 また、日本では同種の製品を多くのアプリケーションに搭載する取り組みも同時に進めている。日本はコーニングの主要事業が揃っており、かつ世界的に強い企業が多く存在する市場でもあり、本社からも重視されている。ローカルならではのモアコーニング戦略も進めていく。

―― CJKKの事業展開について。
 古川 日本のお客様と一心同体で進め、堺市のG10工場の稼働を維持していく。歩留まりやスループットをさらに向上し、工程管理をきっちりと行っていくことで、収益性を上げていく。例えば、溶融窯の定期修繕の際に最新鋭の設備を導入したり、窯のデザインを効率的に刷新したりなどを実施しており、まだまだプロセス、工程管理による収益向上の余地はあるとみている。
 また、基板ガラスはディスプレーだけでなく、半導体のパッケージ基板としてガラスを使用する動きや次世代太陽電池のガラス基板に採用される可能性などで新しい機会が生まれている。ほか、断熱用の3層ガラスの内側ガラスにも使用できるので、まさにモアコーニングな事業展開も図っていく。

―― CIKKでの取り組みについて。
 古川 半導体、データセンター(DC)、車載、医療向けに注力していく。半導体向けでは、当社が強みをもつEUV用フォトマスクブランクスや露光装置のレンズなどのシェアをさらに拡大させていく。フォトマスクの検査装置や露光光源であるレーザー装置に使われる光学部品など、直接半導体用露光装置に搭載される光学部材だけでなく、関連装置などもターゲットだ。半導体市場では24年下期から市場が回復すると予測しており、そこに対応すべく計画を進め、さらに顧客やニーズの掘り起こしも図る。
 DC市場も下期から再び伸長し始め、今後情報量は増加するため、光ファイバーやDC周辺設備向け部材の採用を拡大させていく。日本は地政学的に安定しており、先般AWS(アマゾンウェブサービス)が日本において3年間で2兆円超の規模の投資を発表したように、DC投資には魅力的な国だ。当社にとってもチャンスが増えるとみており、これをしっかり捉えていく。
 車載向けでは、排ガス浄化用セラミックフィルターのさらなるシェア拡大と、車載ディスプレーやセンサー周りなどでガラス製品の採用拡大を図る。医療向けでは、今後革新が進む細胞・遺伝子治療向けに注力し、細胞培養関連製品の販売を大きく伸ばすべく、主要製薬会社に積極的にアプローチしていく。

―― 業績目標など抱負をお聞かせください。
 古川 24年は当社製品のマーケット全体が踊り場にあり、上期は厳しい状況が続くが、下期には回復するとみている。ここに向けて各施策を進め、下期にはマーケットの伸び以上に業績を伸長させていく。24年の業績は前年比で数%程度の伸びとなるだろうが、25、26年は年率10%以上の成長が期待できるとみており、そのための準備を着々と進めていく。


(聞き手・澤登美英子記者)
本紙2024年3月29日号6面 掲載

サイト内検索