商業施設新聞
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No.947

統合と北海道


高橋直也

2024/3/12

ツルハドラッグは子供のころから馴染み深い(写真は千葉県の店舗)
ツルハドラッグは子供のころから馴染み深い
(写真は千葉県の店舗)
 ツルハホールディングスと、ウエルシアホールディングスの経営統合が大きく報じられた。ツルハHDは北海道地盤の会社として知られるが、札幌出身の筆者は、ツルハドラッグは子どもの頃から馴染みの店舗。実家のすぐ近くにも店舗がある。地元の企業がイオングループという大企業とタッグを組むことは、『地元の企業感』が少し薄れる気分がして、寂しくもある。ただ、ドラッグストアはオーバーストアも指摘され、競争が激しい。物流の24年問題など課題も多く、統合は合理的な判断と言えるだろう。

 今回の統合にどれだけ影響があったかは分からないが、以前、証券会社のアナリストを取材した際、北海道は商売をするのに難しい場所であると感じた。アナリストいわく、日本で10万人商圏は1200カ所ほどつくれるそうだが、実際に機能するのは800カ所ほどらしい。というのも、ターミナル駅だと特定の出口だけで通行人数が10万人を超える場合もあるが、数十km圏の巨大な円を作らないと10万人規模に達しない場所もある。広大すぎる10万人商圏は、チェーンストアが出店するのが難しい。広大な北海道はこうした広すぎる10万人商圏が多いらしい。その上、北海道の人口は札幌一極集中だ。某企業から、北海道で商業施設の再生を進めていたが銀行からの融資を得られず、断念したという話も聞いたことがある。北海道での商売の難しさを感じさせる。

 北海道千歳市の「千歳アウトレットモール・レラ」の営業終了が決まってしまったが、「三井アウトレットパーク 札幌北広島」との競争が背景の一つにあると思われる。札幌市により近い、北広島の施設が残るのは、人口が札幌に一極集中している表れか。国内の株価は上昇しても商業施設の環境は難しくなっている。

 半導体メーカーのRapidus(ラピダス)が千歳市で工場を建設するが、どれだけ広域に恩恵を与えてくれるか。工場周辺にはオフィス、物流施設、ホテルなどの需要が生まれるだろう。数カ月前、実家近くの駅前にホテルができたが、開発を知った時は「こんなところにホテルを作って大丈夫か……?」と心配していたが、どうやらラピダス関係の出張者、北広島のボールパーク関連での利用が期待できそうである。地元の人間として一安心だ。このほかラピダスの進出により、札幌市中心部や苫小牧など周辺の街にも恩恵が及ぶことが見込める。ではその周りはどうか。北海道は広大すぎるため、全域にラピダス効果が及ぶことは考えにくい。むしろ人手を補充するため、北海道の別の地区に住む若い人が千歳周辺に引っ越す・移住することなどがあり得るだろう。

 最近、北海道のほぼ中央に位置する富良野一帯にもインバウンドが増えているという。やはり北海道が今後も持続するカギは観光か。そういえば大学に入学したてのころ、サークルや授業で自己紹介をするとき「北海道出身です」というと、「おお~」と周りから感嘆の声が上がった。当時は「?」という気分だったが、今では観光地としての注目度合いがわかる。今は北海道も持続できているが、50年後、100年後はどうか。いずれ驚くような規制緩和や、大胆な政策を進めないと、そのうち行政に「どこかの県と統合してもらいますか。昔ツルハとウエルシアも統合しましたし」などと言われかねない。
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