経産省の半導体に対する取り組みは一気に加速している。ここに来ては、補助金の対象が企業の設備投資にとどまらず、研究開発の分野にも拡大しており、エッジAI向け半導体開発に対して450億円を支援するというのであるから、驚きなのである。
具体的には東京大学、産総研、理化学研究所、そしてラピダスなどが参画する最先端半導体技術センター(LSTC)のエッジAI半導体/2nmの設計開発に強力な支援を決めたのだ。クラウドを介さず、駆動することで、通信量や電力消費量を圧倒的に抑え込む半導体の設計開発に、産業連携で全力を挙げることに共鳴したのである。
産業用、生活支援ロボット、自動車、小売りなど社会生活に広範囲に使われるエッジAI半導体はラピダスでの製造を想定したうえで、280億円を投入する。これとは別に2nm未満の高機能な半導体製造技術の開発にも170億円を投入し、トランジスタ、配線技術、製造装置の開発を行う。
こうした状況下、2024年3月1日(金)14:00~18:00に注目の国際シンポジウムが開催される。東京大学のBeyondAI研究推進機構が主催するものであり、会場は東京大学・福武ラーニングシアター(会場+オンラインのハイブリッド方式)。テーマはBeyondAIのためのデバイスとハードウェア技術。
当日は藤井輝夫・東京大学総長、宮川潤一・ソフトバンク社長の開会挨拶に始まり、海外からはNVDIA、TSMCなどの上級副社長も講演参加が予定されている。さらにラピダスの東哲郎会長、東京大学の黒田忠広教授、東北大学の大野英男学長も参加されるのであるからして、まさにオールスターの超豪華メンバーによる講演会なのである。パネルディスカッションに東京工業大学の益一哉学長、日本大学の渡辺美代子常務理事、経産省大臣官房の西川和見参事官も参加して、熱い討論が期待されよう。
現在数多く開催されているAI関連のシンポジウムでは生成系AI、大規模言語処理モデル(LLM)に代表されるAI技術の利用方法や応用分野、あるいは倫理的、法的な側面が主なテーマとして取り扱われている。しかし、今回のシンポジウムでは、従来とは異なる視点で、AIおよびBeyondAIに求められる技術的課題をハードウェア(半導体技術)の視点から取り上げることが最大の特徴なのだ。
AIのインフラとしては高速で大容量のデータ処理が必要であるが、一方で消費電力の一気増大でSDGs革命に逆行するという二律背反の問題が横たわっている。これをどう解決していくのかという点でも、このシンポジウムには期待することが多いのである。
さあ、注目の国際シンポジウムに多くの人が参加しようではありませんか!!
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会場参加=https://form.qooker.jp/Q/auto/ja/BAISympoOnsite/0301reg/
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オンライン参加=https://form.qooker.jp/Q/auto/ja/BAISympoWeb/0301reg/
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詳細プログラム=https://beyondai.jp/contents/wp-content/uploads/2024/02/4thBeyondAI-Symposium_flyer_J.pdf
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。