ソニーセミコンダクタソリューションズ(株)(神奈川県厚木市)は、イメージセンサー分野において、事業規模だけでなく技術的にも市場をリードするトップメーカー。BSI(裏面照射型)や積層型など、CMOSイメージセンサーの大きな技術革新は必ずといってよいほど同社から生まれてきた。主力分野となるスマートフォン(スマホ)市場の回復の遅れ、また他社との競合も厳しさを増すなか、2024年の事業運営も難しい舵取りを迫られている。CFOの立場で同社を引っ張る高野康浩氏に現況、そして24年の展望を伺った。
―― まずは、23年の振り返りからお願いします。
高野 もともと23年度(24年3月期)の業績策定などの段階では、23年後半にはスマホ市場を筆頭に回復し、リカバリーできるという期待を持っていたが、想定以上にサプライチェーンで在庫が溜まっており、期待どおりにはいかなかったというのが実態だ。
―― 足元の業績は。
高野 イメージング・センシング・ソリューション(I&SS=半導体)は、23年度第2四半期(7~9月)の売上高が前年同期比2%増の4063億円、営業利益が同37%減の464億円となった。為替影響などで増収となったものの、モバイル向け新型センサーの歩留まり問題など製造経費の増加を受けて、利益は減少した。上期決算発表時点で、通期では売上高1兆5900億円(前年度比13%増)、営業利益1950億円(同8%減)を見込んでいる。
―― 中国スマホの状況は。
高野 当初想定していた数字には至っていないが、足元では需要が戻ってきている感触はある。中国スマホの在庫が減少し健全化するなかで動きが出てきている印象だ。
―― 24年度業績の目線について教えて下さい。
高野 今まさにそれを社内で策定しているところだが、まずはスマホ市場の動向が大きな指標になってくる。今のところ、24年(暦年)のグローバルのスマホ販売台数は前年比で横ばい~5%増のレンジになると見ており、その範囲内でどう推移するのかを精査している段階だ。中国スマホをはじめとするミドル~ローエンド領域は変動要因が大きいと思っているが、我々が得意としているハイエンド領域はそれほどギャップが大きくはならないと考えており、ここでのニーズを取り込んでいきたい。
―― 具体的な施策は。
高野 周知のとおり、ハイエンド領域ではセンサーの大判化が進んでおり、一部端末では1インチセンサーを搭載するものも出てきている。ただ、大判化の流れが恒久的に続くわけではなく、これに並ぶ新たな付加価値を提供していく必要がある。例えば、我々が提唱している5Dセンサーのようなものが代表例だ。また、TikTokのような動画系SNSで動画を綺麗にアップしたいといったニーズも増えており、サブ(フロント)カメラでも高画素化ニーズが拡大すると見ている。
―― 設備投資戦略について伺います。23年末に長崎テックの増床分の竣工式を行いました。
高野 Fab5は3期に分けて建設されており、STEP1が21年4月、STEP2が22年7月からそれぞれ稼働を開始した。最終拡張部分となるSTEP3は、22年5月から建設工事を開始していた。すでにクリーンルームが稼働しており、今後需要に応じてFab5内への生産設備の追加導入などを行っていく。23年度には熊本県合志市に約27万m²の土地を新たに取得した。
イメージセンサー以外では、XRデバイスなどで今後需要拡大が見込めるマイクロOLEDについて、現在熊本テックと東浦サテライトで工程を分担して生産を行っている。セットとしては全くの新しい用途であり、今後市場の動向をしっかりと注視していきたい。
(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2024年2月1日号1面 掲載