電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第561回

AIサーバーの出荷台数は24年にサプライズの40%増を継続する!


エヌビディアが圧勝するなかで、AMDなどが急速追い上げ

2023/12/22

 生成AIを巡る動きが、ここに来て急加速している。マイクロソフト、グーグルなどがAIへの投資を積極的に進めているからだ。CPU、GPU、FPGA、ASICを搭載したAIサーバーの出荷台数は2023年に約40%増となり、120万台を超えてきた。

 24年についても前年比40 %増という高い成長を維持すると見られており、全サーバーに占めるAIサーバーは12%まで拡大していくのである。

 ここのところ止まっていたデータセンターの投資は2024年から大きく回復してくる見込みであり、マイクロソフトやグーグルは月額30ドルで生成AIを提供することをアナウンス。これならば世界の2億人ユーザーで約10兆円の売り上げが立つ見込みになり、まさに半導体にとっては待望の新市場がはっきりと開花してくることになる。

エヌビディアの「A100」
エヌビディアの「A100」
 さて、生成AIで使用されるGPUは、エヌビディアがほとんど独占していると言って良いだろう。ただ、最近ではAMDが新型AI向け半導体を発表し、エヌビディア追撃の姿勢を固め始めた。データセンター向けのAI半導体については、今後4年間で年率70%成長というとんでもない伸びが見込まれているだけに、エヌビディアの独占は許さないという各社は24年に次々と新製品を発表してくることになるだろう。一方、エヌビディアはなんと日本に研究拠点設置を打ち出しており、AI人材の育成にも躍起となっている。

 経産省も遅ればせながら、AI向けの消費電力を抑えた半導体やスーパーコンピューターの研究開発に200億円を支援すると言い出した。具体的には、プリファード・ネットワークスに対し、5年間にわたる補助金を支出するのである。インターネットイニシアティブや北陸先端科学技術大学院大学に対しても、支援することを決めた。とにもかくにも、電力消費がとてつもなく大きいAIについては、圧倒的な省エネ半導体が必要なのだ。

 こうした動きの裏には、北海道ラピダスが開発を進めている2nm世代の最先端プロセスを使って、AI半導体でいつか日本が先行したいとの思いが見え隠れするのである。

 その他では、米国マーベルがデータセンターのAI半導体を強化するという動きがあり、ラピダスとコンビを組むIBMも当然のことながら、AI向け半導体は注力していく部門になるであろう。中国ではテンセントが、自社製AI半導体をエヌビディアの代替品として強く売り込みをかけている。

 AI半導体の急加速はDRAMメーカーにも好影響を与えてくる。メモリーはここ1~2年、低空飛行を余儀なくされたが、サムスン、SKハイニックス、マイクロンなどをヒアリングしたところ、実にAI需要で24年はDRAMが60~70%も成長するという強気の予想も出始めている。

 もちろんAIの拡大はエッジのデータセンターも増えてくることが確実であり、5Gで拡大してくることだろう。そして、従来の集中型クラウド・アーキテクチャーに加えて、超分散クラウドアーキテクチャーも増えてくる。

 世にいうメタバース革命も、所詮はAIとエッジコンピューティングの進展がなければ、絵にかいた餅となってしまう。半導体の主戦場はなんといっても、スマホとパソコンであったが、AIというゲームチェンジのアプリが出てきた以上、ここにシフトする体制が必要だ。その意味では日本メーカーはまだまだ遅れており、24年には画期的なAI半導体のファブレスベンチャーが出てくることに大きな期待をかけたいものだ。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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