岩手県奥州といえば、かのWBCのスーパーヒーローである大谷サンの故郷である。筆者は7月の帝国ホテルの講演で、WBCの栗山監督とご一緒する機会に恵まれた。栗山氏によれば、大谷サンは素晴らしい能力とスピリッツを持っているが、少しヘソ曲がりのところがあり、それが可愛らしいと云っていた。また何も云わなくても、アイ・コンタクトですべてがわかる男だったとコメントしていたのだ。
それはともかく、ここに来て岩手県下の半導体関連企業に大きな動きが出てきている。ひとつには東京エレクトロンの子会社が岩手県江刺フロンティアパークの12.5haに進出することになり、地元は湧きかえっている。220億円を投じ半導体成膜装置の新工場と新物流センターを建設するものであり、新規雇用は450人、生産能力は2倍になるという。
こうした動きに誘われるようにして、SBIホールディングスと台湾ファンドリー3番手のPSMC(パワーチップセミコンダクター)が宮城県の第2仙台北部中核工業団地に進出を決定。なんと8000億円を投じ大型の半導体工場を建設することになった。日本政府はほぼ投資額の半分を補助する考えであると言う。28ナノから55ナノまでのチップを月産4万枚製造するものであり、雇用は1200人と大きい。
岩手県北上においてはNANDフラッシュメモリーの大手であるキオクシアが第2期棟(K2)の建設を進めており、1兆円以上の投資を断行している。162層以上の生産を考えているが、市況を考えて稼働開始は少し遅れる見込みだ。しかし第3期棟の建設を想定し、新たな用地取得を進めるなど積極姿勢に変わりはない。
自動車のTier1大手であるデンソーは今後5000億円の投資を実行する構えを見せているが、この対象となるのは当然のことながら、デンソー岩手であろう。
こうした状勢下でi-SB事業化プラットフォーム(運営主体=岩手大学、岩手県、岩手県工業技術センター、いわて産業振興センター)は、2023年12月15日(金)14:00~17:00に岩手大学教育学部1号館ホール(盛岡市)で「i-SB事業化プラットフォーム設立記念シンポジウム」を開催する。ちなみにi-SBとは材質の異なる2つの材料を化学結合により、分子レベルで強固に接合する分子接合技術であり、自動車、半導体などに応用できる重要な基礎技術なのである。
今回のシンポジウムにおいては、まず文部科学省の地域振興室長の廣野宏正氏、岩手大学長の小川智氏が挨拶される。講演のトップバッターはi-SB事業化プラットフォーム代表の水野雅裕氏(岩手大学副学長)が「分子接合技術の取組と今後の展開」と題してお話しされる。次いで、新光電気工業の主任研究員である吉田和洋氏が「次世代半導体パッケージ基板の技術動向」についてスピーチ。ラストは半導体業界最古参記者である筆者が「半導体産業はメタベース革命、SDGs推進の中で爆裂成長の時代に突入!~設備投資ラッシュで九州から東北、北海道までシリコン列島ニッポンの様相」と題して講演させていただくのである。
参加費は無料。ただし、事前申込制で〆切は12月11日(月)までとなっている。(問い合わせ先:i-SB事業化プラットフォーム事務局(岩手大学研究・地域連携課))
多くの方々のご参加を切にお待ち申し上げる次第である。そして、ニッポン半導体は今こそ反転攻勢の時代に入ったことを共有し、熱い議論の場となることを心から期待している。半導体の新たなラインは「北へ!北へ!」と向かっているのだ!
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。