商業施設新聞
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No.934

ポップアップ旋風


岡田光

2023/12/5

 「再来週には業界で注目を集めるニュースをリリースするので楽しみにしていて下さい」と担当者が締めくくった(株)COUNTERWORKS(カウンターワークス)の取材。先日、同社が発表したニュースリリースを見て、改めてポップアップショップの存在感が増していることを感じた。カウンターワークスは、イオンモール(株)が共同運営するファンドから資金調達を実施したことを発表しており、コロナ禍で苦しんだポップアップショップ業界にとっては明るい話題と言えるだろう。

 カウンターワークスの三瓶社長に初めてお会いしたのは、新型コロナの感染拡大が本格化する前の20年初頭。当時、ポップアップショップは(株)パルコや東急不動産SCマネジメント(株)などのデベロッパー、(株)アーバンリサーチや(株)三陽商会といったテナントは積極的に展開していたが、ポップアップショップを取り扱う専業企業は少なく、カウンターワークスはその数少ない取材先の1社であった。

短期間で入れ替わる「TAMLAB」
短期間で入れ替わる「TAMLAB」
 そもそも、ポップアップショップは百貨店やGMSの催事から始まったとされ、20年前後にその名称が定着した。ポップアップショップの認知度が高まった理由としては、地方の百貨店やショッピングモールで空床が増えたことが背景にある。デベロッパー側はこの空床を埋めるために新たなテナントを誘致するが、契約金や保証金といったリスクが高いため、どの商業施設も似通ったテナント構成になってしまい、新鮮味も欠けてしまうことから、ポップアップショップの導入を進めた。テナント側も20年前後に低コストでオンラインストアを作れるサイトが急増したため、ネット上で競争が激化し、オンラインよりもオフラインに活路を求める中小企業やEC企業が増えた。こうしたデベロッパーやテナントの事情がうまく重なり、ポップアップショップは商業施設で日の目を見るようになった。

 ここ数年、ポップアップショップはその勢力をさらに拡大しつつある。私が担当する西日本エリアでは、テナント側が出店するポップアップショップだけでなく、デベロッパー側が用意するポップアップショップも増えている。阪急阪神不動産らは商業施設「HEP FIVE」内に設けた飲食フロア「TAMLO(タムロ)」において、短期間で入れ替わるポップアップスペース「TAMLAB(タムラボ)」を設置。京阪流通システムズは運営する商業施設「京阪モール」内に、食物販を中心に様々な期間限定の店舗が出店する常設イベントスペースを設けた。阪急阪神百貨店も「阪急うめだ本店」の婦人服売り場の改装において、他にはない世界観でブランド体験を提供するイベントスペース「POP UP CIRCUS(ポップアップサーカス)」を新設するなど、例を挙げたらきりがない状況だ。

 ただ、ポップアップショップが増えるということは、裏返せば常設店が減ってしまうということでもある。商業施設を運営するデベロッパーとしては、安定した収入が得られないという不安も抱える。「最近は引く手あまたの状況だ」とテナントが語るように、デベロッパーとテナントの力関係は大きく変化している。とは言え、商業施設を作り、運営に日々全力を注ぐデベロッパーにも、ポップアップショップの恩恵を受けてもらわないと、業界全体が困ってしまう。イオンモールとカウンターワークスの共創で新しい何かが生まれることを願っている。
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