商業施設新聞
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No.933

観光地化した築地の現状


山田高裕

2023/11/28

 コロナ後のインバウンド受け入れ再開が本格化して以降、日本各地の観光名所は盛況が続いている。都内でもインバウンドが集まる名所には事欠かない。その都内の観光地の一つが築地だ。築地市場が豊洲に移転したあとも、食の名所としてのイメージは健在で、コロナ前からインバウンドで溢れていた場所だ。このほど機会があり、築地に実際に訪れてみることにした。

インバウンドで溢れる築地
インバウンドで溢れる築地
 築地に行ったのは平日の昼間であったが、そこは文字どおり人で溢れていた。網の目のように張り巡らされた細い路地には様々な店が立ち並んでいたが、どの路地も人で埋め尽くされており、移動するにも一苦労といった有様だった。築地らしい海産物を扱った飲食店、鮮魚店から、牛肉の串焼きを売る店、菓子や乾物、食器を売る店など店舗は多様だったが、一様に人が入っていた。そしてインバウンドがとにかく多かった。

 そして何よりも目立ったのは、商品の価格だ。観光地として有名な市場は、どこもインバウンド向けの観光地価格で非常に高くなっているという話は聞いていたが、改めて見ると驚きだった。海鮮丼などの定番の料理だけではなく、ズワイガニの足や、和牛の串焼きが1つで数千円することは珍しくないといった水準で、一般的な国内の飲食店の価格とは文字どおり桁が違う水準となっていたのだ。

 そうした信じられないような価格を掲げている店舗では、案内にほぼ英語が併記してあり、店員は身振り手振りを交えながら懸命に客を捌いていた。5000円を超える海鮮丼や、数千円の牛串が普通に売れ続けているのはすごいなと思いながら、自分が買えるのは数百円の冷やしキュウリくらいだと思うのだった。

 観光地化して人が集まれば、宿泊代や料理、土産物などの価格が上がるのは当然だが、この状況は少々極端すぎるように思えた。インバウンドで溢れる浅草の仲見世通りの店舗でさえも、ここまで極端な価格は付けていないだろう。観光地化により国内の客が離れていくという現象はしばしば指摘されるが、築地はその典型例であるようだ。しかし、コロナを経て右肩上がりの好調を取り戻したインバウンド需要を獲得するには、このような変化が必要なのかもしれない。
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