電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第549回

(株)ジャパンセミコンダクター 取締役社長 川越洋規氏


車載用パワー製品が好調
23年度は数量で7~8%増

2023/11/2

(株)ジャパンセミコンダクター 取締役社長 川越洋規氏
 東芝デバイス&ストレージ(株)(東芝D&S)傘下の(株)ジャパンセミコンダクター(岩手県北上市)は、高性能な車載用半導体やモーター制御系のアナログICなどの生産が好調に推移している。東芝D&S(IDM)向け半導体製品のほか、注力するファンドリー事業との両輪でビジネスを展開する。特に車載製品の売り上げが牽引しており、アプリケーション構成比ではIDM事業規模の4割を占めるまでに成長している。製造は前工程(酸化~ウエハーテスト)に特化しており、後工程(ダイシング工程以降)は外注する。同社の川越洋規社長に足元の市況ならびに今後の事業展開について聞いた。

―― 半導体市場の回復が遅れています。
 川越 民生機器向けのMCUや複写機関連のリニアCCDなどが一部低迷している。デバイス製造拠点となる岩手事業所は、稼働率が7~8割で推移している。一方、車載用途ではパワー関連のデバイスを中心にフル稼働が続く。とくに車載用途の多い大分事業所は2020年以降、高水準の稼働が継続している。

―― 23年度の事業見通しを教えて下さい。
 川越 下期の市況は読みにくい部分はあるが、車載向けを中心に堅調に推移するとみている。通期では数量ベースで7~8%成長を目指す。

―― エネルギーや部材コスト上昇が続いています。
 川越 大変頭の痛い問題だ。主要な部材は調達先との長期契約で極力影響が出ないようにしているが、エネルギーコストの上昇が収益を圧迫している。こまめな省エネ活動や太陽光発電の導入などを行っているが、抜本的な解決策とはならない。顧客とは価格改定を視野に値上げ交渉も実施している。

―― ファンドリー事業拡大を謳っていますが。
 川越 現状の構成比(生産数量ベース)は、ファンドリー比率が3~4割で推移しており、顧客は国内外で十数社にのぼる。東芝D&S向けはパワー製品を筆頭にアナログ系、マイコン/ASICなどのロジックデバイスが主流となってきている。今後は車載向けで好調なパワー製品に注力していく。ファンドリー比率の構成比を何が何でも引き上げていく発想はなく、IDM向け事業も拡大しているので、当面のファンドリー比率は現状のまま推移するとみている。

―― 大分を中心に生産能力を引き上げています。
 川越 製造設備の増強は計画どおり進める。大分では従来6インチのあったCR(クリーンルーム)内に8インチ対応ラインを導入する。パワー関連やアナログ系を中心に130nmプロセスがメーンとなる。今年度下期から装置が納入される。一方、岩手はCRの拡張スペースがあるものの、今後の市況を見極めながら最終決断を行いたい。

―― BCPや人材不足への対応を教えて下さい。
 川越 地震時に破損しやすい拡散工程などの石英管といった製品のストックを極力持つようにしている。岩手では免震台の導入などを実施済みだが、大分では正直対応しきれていない部分もある。現在高水準の受注をこなしており、現場の生産ラインを止めるわけにもいかないので適宜進めていきたい。
 すでに大分と岩手の両拠点で80%以上のプロセスで共通化を図っている。BCPの観点からも柔軟に対応がとれる体制を敷いている。一方、人手不足対策では生産工程の自動化を極力進めている。また、生産効率化や歩留まり安定化のために、オペレーターのスキル別による管理システムを導入して、最適な生産システムの運用につなげている。

(聞き手・特別編集委員 野村和広)
本紙2023年11月2日号1面 掲載

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