商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第402回

大和ハウス工業(株) SC事業部 MD企画室 室長 大野拓也氏


全国にRSC10施設の開発余地
既存SCのバリューアップも実施

2023/10/17

大和ハウス工業(株) SC事業部 MD企画室 室長 大野拓也氏
 全国各地にRSCやNSCを展開する大和ハウス工業(株)。新型コロナの感染拡大が落ち着き、既存SCの売上高や客数が回復基調を辿る中、新規SCの開発を進める考えだ。引き続きRSCやNSCの開発用地を探す一方で、開業後20年が経過した既存施設を対象に、建て替えやリニューアルの提案も行っていく。既存SCの状況や新規SCの開発方針について、SC事業部 MD企画室 室長の大野拓也氏に話を聞いた。

―― 既存SCの状況から。
 大野 新型コロナの5類への移行を経て、売り上げ、集客ともに回復傾向が強まっている。NSCはコロナ禍でも売り上げが堅調であった。RSCはコロナの影響を大きく受けたが、22年からは回復基調が続き、直近は単月でコロナ前の2019年比を超えた。エリア別では人口が増えている「イーアスつくば」(茨城県つくば市)や「コトエ流山おおたかの森」(千葉県流山市)は売り上げが順調に伸びている。それに対し、訪日客の利用が多かった「りんくうプレジャータウンシークル」(大阪府泉佐野市)や「イーアス沖縄豊崎」(沖縄県豊見城市)では、訪日客数の減少による施設売り上げへの影響が見られた。沖縄エリアでは人手不足が顕著となり、飲食店を中心に苦戦を強いられたが、22年10月の水際対策緩和で持ち直しつつある。

―― 商業施設づくりに関する考え方について。
 大野 重視しているのは立地、規模、テナント構成である。当社は国内に69の営業拠点を持ち、約700人の営業人員を抱えるのが強みで、全国各地でSCの新規出店が可能なエリアを探しており、RSCやNSCの適性を考慮したうえで開発を進めている。RSCは良い物件があれば積極的に取り組みたいが、開発エリアが限られるため、NSCの開発案件が比較的多い。
 最近は既存施設の老朽化に伴い、建て替え案件が増加しており、既存の商業施設を取得して建て替えを行い、価値を上げる取り組みも強化している。例えば愛知県春日井市の「イーアス春日井」。同施設は物件の取得後、建物自体は建て替え、既存の立体駐車場は改装して利用する方針とし、施設全体の価値向上に取り組んだ。

―― 運営面の工夫やDX導入について。
 大野 近年、商業施設の運営は人件費の高騰や人材不足などの課題が浮き彫りになっている。比較的対応しやすい規模のNSCでは、可能な限り、テナントの営業時間や休日を柔軟に対応できる体制を整えたいと考えている。コトエ流山おおたかの森では通路を外に設け、各店に共用部から入店できるなど配置にこだわることで、テナントが独自に営業時間や休日を決める運営体制とした。
 こうした運営面の工夫に加え、人手不足に対応するため、自動清掃機などの導入も検討している。また出店を希望されるテナントに対してVRリーシングの導入を計画し、地方に立地する施設は、現場に行かなくても1次判断が可能な仕組み作りに取り組んでいる。

―― 開発案件は。
 大野 21年にイーアス春日井、22年にコトエ流山おおたかの森を開業しており、現在は新規物件を検討している最中だ。規模はNSCが敷地5000~1万坪で平屋建てもしくは2階建て、RSCは最低でも敷地2万坪以上で2階建てもしくは3階建てを目安とする。店舗数はNSCが30~60店、RSCは130~250店を数える。
 NSCは政令指定都市や県庁所在地を中心に、全国に70~80施設の開発余地があると考えており、良い物件があれば積極的に手がけていきたい。RSCは当社が商圏分析を行った結果、全国各地に10施設程度の開発余地があることが分かった。NSCと同様に、良い物件があれば開発にチャレンジしたい。こうした新規SCの開発とともに、「アルパーク」(広島市西区)のような既存SCの価値向上にも取り組んでいく。

―― 具体的には。
 大野 開業後20年を経過したSCは全国各地に2000施設強あり、建て替えを検討または売却を考える施設を探している。30年経つと建て替えの検討も必要になるが、20年程度であれば既存の建物を活用しながらリニューアルできる可能性がある。アルパークは築30年以上が経過していたが、天満屋跡地の西棟を中心に改装を実施しており、今後もこのような案件は増えてくるだろう。
 5類への移行後、お客様を獲得する機会は増えたが、施設間の優勝劣敗も鮮明になってきた。当社では今後も新規SCの開発を積極的に進める一方、既存SCを活用し、今なお続く資材高騰の影響を抑制し、循環型社会にも対応していきたい。

(聞き手・副編集長 岡田光)
商業施設新聞2516号(2023年10月10日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.419

サイト内検索