電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第551回

電子デバイスの国内王者はニデック、2位にTDK、3位に村田が位置するのだ!


国内半導体トップのルネサスを上回り、世界シェア43%を持つ力強さ

2023/10/6

 電子デバイスと言えば、半導体のことだと思っている人が数多い。それはとんでもない間違いである。確かに電子デバイス市場120兆円の主役は半導体であり、65兆円となっている。ところが、半導体の約半分を持つ一般電子部品もまた重要な存在であり、世界市場は32兆円となっている。これに液晶、有機ELなどの電子ディスプレー13兆円が続いており、その他はリチウムイオン電池などの電池産業である。

国内電子部品メーカーは世界で存在感を堅持
国内電子部品メーカーは世界で存在感を堅持
 重要なことは、半導体デバイスにおける日本企業の世界シェアはたったの8%しかないことだ。これに対して、一般電子部品における日本企業の強さは際立っており、なんと世界シェア43%を占有しているのである。

 そしてまた重要なことは、電子デバイスという括りで国内の生産ランキングを見れば、第1位は半導体メーカーではない。国内王者はニデックであり、やたらめたらにM&Aを行っている企業ではあるが、何と言われようと王者は王者なのだ。売上高でいえば2兆2428億円となっており、これに次ぐ2番手はTDKで2兆1808億円、3番手は村田製作所で1兆6868億円となっている。

国内電子部品メーカーは揃い踏みで出展
国内電子部品メーカーは揃い踏みで出展
 一方、国内主要半導体企業の売上高を見れば、トップはルネサス エレクトロニクスであり1兆5027億円となっており、電子部品3社の後塵を拝している。ついでに言えば、ソニーグループが1兆4022億円で2位にランクされ、3位はキオクシアが1兆2821億円で続いている。

 こうした事実が物語ることは非常に興味深いのだ。一体に、半導体の伸びと一般電子部品の伸びはほぼ同期している。半導体が伸びれば、モーターも、プリント基板も、コンデンサーも、コネクターも、インダクターも、抵抗器も、センサーも皆伸びていくのは当たり前なのである。

 この分野で強みを持つ日本勢はさらに技術という点でも磨きをかけている。最近になって目立ってきているのは、半導体製造装置のすさまじい拡大に合わせて、これに使うカスタマイズの電子部品が伸びていることだ。これは合わせ込みに強い日本企業でなければできない。素材から作り込むミラクル技術を持つ企業も多く、製造装置を内製化している工場も数多い。このことで、半導体のように知財権が海外に流出するリスクが少ないのである。

 電子デバイス産業新聞によれば、国内の主要な一般電子部品メーカー30社の2023年度設備投資額は前年度比13%増の1.2兆円規模が計画されているという。新増設案件は岐阜県を境に東西で見た場合、約8割は東、約2割が西と圧倒的に東エリアに案件が集中しており、「東高西低」とも言える状況なのだ。分野別では、積層セラミックコンデンサー(MLCC)をはじめとするコンデンサー投資が主役となっているほか、他の電子部品でもEVなど車載向けの需要増に対応した投資案件が目立っている。

 一般電子部品の企業も海外に投資するケースは非常に多いのであるが、ここに来て風向きは変わってきている。国内に工場を作って海外に輸出すれば、円安メリットをまともに享受することができる。

 さらに言えば、海外に投資したとしても一番コアとなる工場、および開発棟は国内に集中させるのがほとんどである。この時代にあっては、知財権をいかに海外に流出させないかということが最重要案件となってきているのである。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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