電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第103回

(株)東芝 執行役専務 セミコンダクター&ストレージ社 社長 成毛康雄氏


メモリーは想定以上に好調
システムLSIの収益安定化へ

2015/1/9

(株)東芝 執行役専務 セミコンダクター&ストレージ社 社長 成毛康雄氏
 好調なスマートフォン(スマホ)需要に支えられ、2014年の半導体業界は前年比9%増(WSTS調べ)の成長を謳歌した。パソコンも当初言われていたほど落ち込まず、HVやEVなどの環境対応車が堅調に伸び、クルマの電装化比率の向上と相まって半導体市場を下支えした。新たな市場としてスマートウオッチやスマートグラスなどのウエアラブル機器端末が脚光を浴び始めたが、15年も引き続きスマホが半導体需要を牽引する構図は大きく変わらないだろう。
 東芝は、スマホ向けNANDフラッシュメモリーで高収益を誇り、利益の大半を同分野で稼ぎ出すが、足元ではシステムLSIなどで依然厳しい事業展開を余儀なくされており、まだ積み残した課題は多い。セミコンダクター&ストレージ社の成毛康雄社長に15年の事業展望や戦略について伺った。

―― まずは14年のメモリー事業を振り返って。
 成毛 スマホが夏場から旺盛な需要があって伸長した。期初計画よりも売り上げが伸び、まだ15年1~3月期を残すが、14年度通期では半導体事業全体で前年同期比微増となる見込みだ。単価下落もあったが、想定以上に良かった。
 四日市工場Y5のフェーズ2の建屋が竣工し、次世代の3D-NANDの専用棟(NY2)も着工した。当面の需要増への投資に道筋をつけた。

■高輝度LEDを近く投入

―― ディスクリート事業の状況は。
 成毛 14年上期は黒字を確保でき、まずまずのところまできた。パワーは一部で出遅れていたが、新製品の投入を増やす。認定を取れたものもあり、収益をさらに拡大する。再参入するIGBTも何をやるべきかクリアになっており、15年以降売り上げを伸ばす。
 白色LED事業は正直、立ち上げで苦労したが、ここにきて140ルーメンの製品を出荷している。しかし、これはまだ入り口で、近いうちにさらに高輝度なLEDを商品化する。本格生産に向けて15年が勝負の年となる。そのため、技術開発スタッフを拠点の加賀東芝エレクトロニクスに集結させた。量産を一気に加速する。GaN HEMTなどGaNパワー半導体も量産したい。

―― システムLSIは苦戦を強いられています。
 成毛 新製品の開発に注力したが、残念ながら売り上げ拡大には至っていない。もともとすべての分野を攻める領域ではない。車載・産業分野に特化して、確実に利益をとれるビジネスに立て直す。
 有力製品としては画像処理プロセッサー「Visconti」や、短TATで開発・量産が可能なカスタマイズSoC「FFSA」を提案している。最新版のVisconti4では夜間認識性能などを大幅に向上し、歩行者や標識以外に落下物・落石などの予期しない障害物も検出可能にした。FFSAは、FPGAや汎用ASICからの代替を目指す。
 メモリーが好調な間に、利益を安定的に出せるようにするのが私の仕事の1つだと思っている。

■CISは汎用品に舵切る

―― CMOSイメージセンサー(CIS)は。
 成毛 従来はハイエンドを狙って特定顧客向けに事業を展開していたが、もう少し量の出る汎用品で勝負したい。それで基礎を作り、事業を伸ばす戦略に切り替えた。今回、数が期待できる8M品を投入して販売体制も変えた。中国系スマホ端末メーカーを中心に、専用のAPや主要レンズメーカーの仕様・リストに合わせた製品として販売攻勢をかける。
 競合他社に比べてチップサイズが小さく、自分撮りカメラ向けなど徐々に引き合いが出ているが、収益面では厳しく、15年の課題として鋭意取り組む。

―― 工場単位の動きはどうですか。
 成毛 加賀東芝エレクトロニクスは稼働率が戻ってきている。平均すると9割以上の水準だ。岩手東芝エレクトロニクスは主力がCCDになっている。大分工場では300mmの生産ラインを有効に活用する。現在、CISを中心にメモリー用のコントローラーICを製造しており、品目をさらに拡大していく。これにより稼働率を引き上げ、収益を向上させる。
 姫路半導体ではSiCの専用ラインを構えている。今盛り上がっているように見えるが、実際は限定された市場しか立ち上がっていない。電鉄向けに量産を開始した。近くフルSiCの製品も出荷する。


(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年1月7日号1面 掲載)

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