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第12回

大研医器、MEMS医療機器の開発に注力、開発用CRを整備


2014/12/22

CRを整備した商品開発研究所
CRを整備した商品開発研究所
 大阪府和泉市にある泉北高速鉄道線の和泉中央駅から車で15分。そこに位置するのが大研医器(株)(大阪市中央区道修町3-6-1、Tel.06-6231-9901)の和泉アセンブリーセンターと商品開発研究所(大阪府和泉市あゆみ野2-6-2)である。同社は吸引器を主力製品とする医療機器メーカーで、近年は新規分野としてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems、微小電気機械システム)デバイスを搭載した医療機器の開発に注力している。
和泉アセンブリーセンター
和泉アセンブリーセンター
 同社は生産方式としてセミファブレス体制を標榜している。これは新しい製品の生産をまず自社で手がけ、その製品の生産ライン設計やノウハウなどが確立できれば、外部に委託するというもの。和泉アセンブリーセンターは、そのノウハウの確立などを担当する生産拠点だ。
 センターの規模は3階建て延べ約3000m²。生産に関して完全自動化は推進せず、手作業で行う工程をあえて多く残している。というのも、医療機器は変種変量(顧客仕様の製品を必要な数だけ、決められた納期でおさめること)への対応力が問われ、自動化しすぎると逆に生産の効率が落ちてしまうためだ。そのため受注状況によってラインの人数を毎日変更し、作業者を複合的に組み合わせることで対応力を高めている。また、医療機器メーカーは、災害発生時にも早期の復旧が求められるが、その点も自動化する工程を一定にとどめておくことで復旧スピードを高めることができる。そのほか製造装置や治具の設計開発を自社で行える体制を敷いており、生産性の向上を常に図れることが強みだ。
 同センターに隣接し、研究開発を担当するのが商品開発研究所(3階建て延べ約3000m²)である。10月、その研究所内にクリーンルーム(CR)が新たに整備された。近年強化しているMEMSデバイスの開発スペースだ。
 大研医器は、数年前から新規分野としてMEMS分野に着目。7月には欧州最大の応用研究機関である独フラウンホーファー研究機構(FhG)とMEMS分野の共同研究契約を締結した。具体的には、FhG内にある「フラウンホーファーEMFT」からMEMSに関するライセンス使用許可や技術供与などを受けたもので、現在その技術を応用した医療機器用デバイスの開発に取り組んでいる。
 MEMS技術は半導体分野に使用されるのが一般的であるが、大研医器では同技術を金属加工に使用。MEMS技術を施した薄膜の金属フィルムを多層化し、超小型ポンプとして活用する。1年半以内にMEMSポンプの製造プロセスなどを確立し、3年以内にMEMSポンプを搭載した最終製品の実用化を目指している。最終製品の候補としては、胸腔ドレナージ(胸腔内にチェストチューブを挿入し、胸腔に貯留した空気や液体を排出する装置)の開発が進んでいる。一般的なものは重さが5kg程度であるが、MEMSポンプを使うことで1kg以下にできるという。
 同社では前述のMEMS医療機器を中核製品に育て上げる方針。現在の全社売上高は76億3500万円(2013年度実績)であるが、これを19年度までに300億円にすることを目指していく。MEMS製品に関してはセミファブレス体制をとらず、生産の外部委託はしない見込み。そのため現在、MEMSポンプならびにポンプを搭載した最終製品を生産するための、新拠点整備が検討されている。和泉アセンブリーセンター内の空き敷地を活用する案のほか、関東地方を中心に拠点を設置する可能性もあり、すでに複数の候補地がピックアップされているようだ。
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