2014年は、数年前に仕込まれていた駅前の地域密着型商業施設が続々とオープンした。池袋駅東口の「WACCA」をはじめ新宿駅東口の「新宿中村屋」、銀座駅の「キラリト ギンザ」、さらにJR山手線目白駅前の「TRAD MEJIRO(トラッド目白)」などが注目される。このうちトラッド目白は、エヌ・ティ・ティ都市開発(株)が開発し、11月20日に開業した地域コミュニティ型商業施設で、商業系ではクイーンズ伊勢丹とファミリーマート、各種レストランやカフェなどが出店した。また地下2階には「小林紀子バレエアカデミー」、地上3~4階には結婚式場「リュド・ヴィンテージ目白」を開設し、文化と芸術的な雰囲気を放っている。地域の住民や学習院大学と付属学校の学生など年間の来場者200万人を目指しているという。
トラッド目白は、目白駅前の目白通り沿いの旧コマースビル跡地に建設され、駅前からの地下通路を通って施設地下1階に接続している。周辺は学習院大学や川村学園などがある文教エリアで、学生や地域住民のコミュニティの役割も期待される。通り沿いの建物は高さ制限で地上4階建て程度に規制されており、街路樹の銀杏並木や学習院大学の森と調和したスカイラインが形成され、さらに煉瓦造りの外壁が街に溶け込み、伝統的で落ち着いた街に相応しい佇まいを感じさせる。このことから施設名にトラッドという名称を採用したと聞く。
テナントは、商業、飲食、サービス、文化など多様な16店(施設)で構成しており、地下1階~地上2階の3フロアは食品スーパーやコンビニ、カフェ・レストラン、和食店、ベーカリーなどが出店している。特にクイーンズ伊勢丹は高品質商品のスーパーとシェフズベーカリーを出店した。
地下1階の同スーパーは店舗面積が約580m²で、生鮮三品から惣菜、一般食品、酒類まで扱っている。特に入り口前面、店舗中央に設置された惣菜売り場「DELI KITCHEN(デリキッチン)」は、オープンキッチンを採用、出来たてをその場で販売する。通路も余裕を持たせ、高齢者も安全・安心の買い物ができる環境を整えた。
また、もう一つ注目したいのは青果売り場を対面販売としたことだ。以前、当方が仙台市の食品スーパーを取材した時に初めて見たが、同店では、こだわりの野菜や果物を揃え、買い物客にアピールしていくという。さらに生鮮三品すべてにも対面販売を導入しており、生鮮・惣菜への力の入れようが伝わってきた。
地上1階には、24時間営業の「ファミリーマート」、フラワーショップ「レインボウ」、イタリアンレストラン「ピッツェリア37」のほか、「宮越屋珈琲」「シェフズベーカリー」「ケーキショップ シェマディ」、2階には「ロイヤルガーデンカフェ」、「南国酒家」、モスダイニングの和食「あえん」などが出店した。また、静岡市に本店を構え、熟成牛のステーキを提供する「目白 旬香亭」は、東京の顧客が静岡本店へ通っていたことが後押しして、2年半ぶりに東京へ戻ってきたという。
地上3~4階には、アターブル松屋がウエディング・バンケット「リュド・ヴィンテージ目白」を開設した。白を基調としたチャペル「ディアナ」、ガーデンを併設した宴会場「グレース」、4階は学習院大学の森を望む場所にバンケットホール「シルヴァン」を開設、書棚やワインセラー、ピアノなどのラウンジも併設し、大人の雰囲気を演出している。
さらに地下2階は、小林紀子バレエ・シアター、バレエアカデミーが開設された。1973年に、目白で創立した日本有数のバレエカンパニーで、世界レベルの舞台を手がけ、英国との交流を軸にグローバルな芸術文化活動を展開している。満3歳から大人まで伝統に基づいたクラシカルバレエを学ぶことができるという。
トラッド目白は、背後に高級住宅街を控え、正面向かい側には学習院大学のキャンパスがある。カフェでは地域住民や学生達が会話を楽しみ、青春時代を目白で過ごした若者達が再びウエディング施設として利用できる。新たな街のコミュニティに期待したい。