(株)東芝は、ロジックLSI事業の1つとして、IoT(Internet of Things)時代を見据えたプラットフォームソリューション「ApP Lite(Application Processor Lite)」シリーズの本格展開を開始した。取り組みをロジックLSI事業部 事業部長附の松井俊也氏に伺った。
―― ApP Liteシリーズとは。
松井 センサーで取得した生のデータや映像、音声情報、またはこうしたデータの複合・統合・解析を行い、セキュアに通信できるロジックの新プラットフォームだ。IoT機器では、ロジックそのものの性能よりもむしろ、どのようなデータを取得し、最終的にどのようなサービスの提供が可能となるかが重要。ApP Liteはこうしたニーズに対応できるプラットフォームであり、お客様とコラボレーションしながら課題を解決していくベースになるシリーズ商品だ。
―― シリーズのラインアップは。
松井 用途に応じて「TZ5000」「TZ3000」「TZ2000」「TZ1000」の4つを開発しており、3000と2000は量産中、5000と1000はエンジニアリングサンプルの提供を開始している。
例えば、TZ1000は長時間のバッテリー駆動を必要とするウエアラブル端末や環境データ取得端末を想定したデバイスだが、ARM Cortex M4Fプロセッサー、Bluetooth Low Energy通信機能、センサー、フラッシュメモリーを1パッケージに搭載したSiP(System in Package)であり、内蔵センサーや外部センサーから取り込んだ複数情報の統合処理(センサーフュージョン)を可能にしている。
単にARMプロセッサーを搭載するだけでなく、当社が培ってきたノウハウを取り入れることで、動作時の消費電力をおよそ2分の1にすることもできている。また、車載用プロセッサー「Visconti」に採用されている、東芝の強みである画像認識技術を搭載しているTZシリーズもある。
―― 販売手法が従来製品と異なりそうです。
松井 従来製品と同様に端末メーカーへ販売活動を展開するのはもちろんだが、それよりも重要なのは、サービスを提供するお客様とのコラボレーションだ。どういうサービスを提供したいのか、具体的なアイデアはお客様が持っている。当社だけでは想定できないような様々な応用があると考えており、現在、ヘルスケア、社会インフラ関連、運送業界やスポーツ関連といったサービス事業者との連携を図っているところだ。
―― 具体的な引き合いの状況は。
松井 すでに国内はもちろん、米国、欧州、中国、アジア各国といった海外からもかなりの引き合いをいただいており、採用が決定した案件も出てきた。採用の実例を順次ご紹介していくことで、TZシリーズの使い方を想像しやすくしていきたい。
―― 生産に関しては。
松井 ロジックLSIの生産アセットは社内外に十分な能力があるが、センサーはお客様の要求を実現できる最適なものを選択し調達することになり、様々なメーカーと話をしている。今までセンスするのが困難だった情報、例えば、匂いなどを分析できる小型のセンサーが登場すれば、さらに新たな展開ができるとみて期待している。
―― 今後の抱負を。
松井 TZシリーズは、従来のロジックのように微細化をして性能を上げ、いいデバイスを作れば使っていただけるという商品ではない。お客様の課題に親身になって向き合い、ともに課題を解決するための商品だ。当社にはこれを解決する力があると自負しており、ぜひとも我々に悩みの相談をお寄せいただきたい。
(聞き手・本紙編集部)
(本紙2014年10月22日号3面 掲載)