電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第94回

KOA(株) 代表取締役社長 花形忠男氏


固定抵抗器で世界トップクラス
長野県下2カ所で積極投資
女性労働力の活用では出色の存在

2014/10/10

KOA(株) 代表取締役社長 花形忠男氏
 KOA(株)(長野県上伊那郡箕輪町大字中箕輪14016-193、Tel.0265-70-7171)は、1940(昭和15)年に創立された電子部品カンパニーであり、抵抗器、コンデンサー、コイルの製造企業として名乗りを上げた。信州伊那谷にはKOAグループの主要生産地が十数カ所もあり、徹底的な地域集中メーカーでもある。固定抵抗器では世界シェアの12%を握っており、世界のリーディングカンパニーとして活躍し続けている。2014年3月期の売り上げは448億9500万円、前年度比12.5%増と順調に推移している。同社を率いる代表取締役社長の花形忠男氏に話を伺った。

―― KOA創業の精神とは。
 花形 KOAが本拠地を持つ伊那谷エリアは、かつて養蚕を中心とする農業地帯であった。しかし1929年の世界大恐慌の影響で生糸価格が暴落し、以降の養蚕農家の暮らしは急激に厳しくなる。創業者の向山一人もそんな養蚕農家の生まれであったが、何としてもこの伊那谷に工業を興し、現金収入の道を作り、家族がみんな一緒に暮らせるようにしたいと考えた。これがKOA創業の精神である「農工一体」へとやがて結実していく。

―― 人を大切にする会社、という評判です。
 花形 伊那谷エリアには十数カ所のKOAグループの工場があり、この団結力がモノを言っている。もちろん過去において当社も大きな景気変動の影響を受け、自宅待機や賃金カットなどの苦しい試練があったが、万策尽きるまで雇用を守るという経営の強い意志のもと、社員すべてで痛みを分かち合い、一致団結してこれを跳ね返してきた。
 抵抗器業界でトップクラスの評価は大変ありがたいと思っているが、これからも創業の精神と、現向山会長の考える信州伊那谷エリアの人たちをはじめ、KOAを支えていただいている方々との信頼関係構築という企業使命を堅持していきたいと考えている。

―― 現状の売上高構成比については。
 花形 14年3月期売り上げは448億9500万円であり、経常利益は38億1300万円という結果であった。ちなみに総資産は639億7900万円、自己資本比率は80.2%となっている。
 製品別の売り上げ構成比を見れば、抵抗器が圧倒的で85.7%、ICおよびIC関連機器が2.5%、高周波インダクターが2.2%、安全部品が5.0%、その他が4.6%である。
 これを用途別で見れば、一番多いのが自動車で32.7%、次にコンピューター14.4%、その後はAV機器10.8%、通信機器10.7%、家電8.9%と続いている。国内売り上げは全体の37.4%で、残りは海外となるが、やはりアジアが多く、35.3%を占めている。

―― 業界に先駆けて定格電力の世界標準化を進めています。
 花形 抵抗器は電流を流れにくくする素子で、その制限した電気エネルギーを熱に変換する。リードタイプ抵抗器の放熱先は主に空中だったが、チップタイプ抵抗器はプリント基板への放熱がほとんどだ。
 高密度実装化が進むにつれて基板上の発熱する電子部品の近くに、チップタイプ抵抗器が実装されるケースも多くなった。この場合、抵抗器付近の基板温度が上昇し、抵抗器自体の温度も上昇する。こうなると、これまで用いてきた周囲温度による定格電力の規定が正しい条件を示さなくなることになる。つまり、抵抗器メーカーが試験する条件とお客様が実際に使用する条件が異なるということだ。
 この課題を解決するべくKOAでは、業界に先駆けて定格電力の基準を抵抗器の周囲温度から、抵抗器が基板に接合されている部分(端子部)温度へと変更を進めている。

―― 積極的な設備投資も実行されています。
 花形 最近では長野県上田市に子会社の真田KOAが16億円を投じ、新工場を立ち上げた。ここでは要素技術としての薄膜形成技術、宇宙開発用部品で培った信頼保証技術をベースにバリスタ、白金温度センサー、高信頼性抵抗器の3製品群の量産を強化する。
 一方、長野県阿智村には新工場「七久里の杜」を立ち上げたが、ここにも35億円の投資を実行した。

―― 女性労働力の活用についても積極的です。
 花形 当社ではここ数年にわたり、結婚・出産・育児で退社した女性は1人もいない。要するに、女性にとって非常に働きやすい会社と言ってよいだろう。出産に伴う時短、さらには手厚い子育てのサポートなどの実態を見れば、女性に優しい社風を築いてきている。
 ただ、女性の幹部登用については、このような「次世代育成支援制度」をはじめとする人事処遇制度構築や教育に中心的役割を果たし、現在も活躍中の深野香代子常務がいるが、それ以降については「まだ道半ば」といえよう。


(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2014年10月8日号3面 掲載)

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