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第92回

スミダコーポレーション(株) 代表執行役CEO 八幡滋行氏


コイル専業でグローバルNo.1
自動車向け60%、医療機器にも展開
売上高10億ドル、営業利益10%が目標

2014/9/26

スミダコーポレーション(株) 代表執行役CEO 八幡滋行氏
 コーポレートガバナンスを強化するため、コイルの世界チャンピオン企業であるスミダが委員会設置会社に移行したのは2003年4月のことであった。日本で第1号となる委員会設置会社を設立したスミダは、社外取締役が過半数を占める法定の指名委員会、監査委員会、報酬委員会に加え、事業戦略を検討する戦略委員会を設置した。他社に先駆けて「執行」と「監督」を明確に分離する体制を採用し、業界をあっと言わせたのだ。
 スミダグループの開発・製造・販売は世界14カ国に37拠点、従業員2万人規模にまで拡大している。一方で、06年2月には欧州で70年の歴史を誇る電子部品メーカーであるドイツのVOGTを買収した。コイル一筋の哲学でいよいよ売上高10億ドル(1000億円)企業を目指すスミダコーポレーション(株)(東京都中央区日本橋蛎殻町1-39-5、Tel.03-6758-2471)代表執行役CEOの八幡滋行氏に話を伺った。

―― 創業者の八幡一郎さんのエピソードはたくさんありますね。
 八幡 この会社は私の父である八幡一郎が起こしたものである。父は大正13年に東京・墨田区で町工場を営む八幡米蔵・きん夫婦の長男として生まれ、昭和22年に東京工業大学電気工学部を卒業する。当時、東京電力の子会社で真空管を作っていた品川電気に入社した。その後、神田にある電気部品の露店から部品を仕入れ、ラジオ組立に参入するのだ。しかし、ラジオの量産をするには資本がない。ぎりぎりの資本で何か商売ができないか、と考えた結果がコイルの製造だった。しかし、まさかその時に、父は世界No.1のコイルメーカーになるとは予測していなかっただろう。

―― イギリスに8年間も留学されたそうですね。
 八幡 私は昭和26年に生まれ、私立独協中学に入学するが、どうも面白くなく学校をサボるようになった。そこで父はイギリスの学校に行くことを薦めたが、それ以降約8年間、私は日本には帰ってこなかった。ケントカンタベリー大学では電気工学を専攻する。8年ぶりにわが家に帰った。

―― そしてスミダ電機へ入社ということですか。
 八幡 ところが、そうはならない。何しろ中学校でイギリスに行ったまま8年間、一度も帰っていない。まさに浦島太郎状態であり、日本語を使うことが実に難しかったのだ。そこで、改めて大原簿記専門学校に進み、その後、日本能率大学に入学して経営学を専攻する。そしてようやくにしてスミダ電機に入社するのであるが、ただちに香港に渡り、多くの仕事をこなしていく。香港は当時、経済の急上昇が始まっており、労働集約型のコイルを生産し販売するには絶好のステージであった。香港で地歩を築き、ASEAN、中国と海外展開を加速する。今や生産の90%以上が海外であり、まさにグローバリゼーションの先駆け企業といえよう。

―― 今日にあってスミダの業界ポジションは。
 八幡 コイル専業としてはグローバルNo.1と自負している。製品のデジタル化が進めば進むほど、アナログであるコイルの必要性は高まるのだ。ちなみに自動車の安全パーツとなるアンチロックブレーキは1製品に8~12個のコイルを使う。このABSコイルにおいてスミダは世界シェアの30%程度を持っていると見ている。また、キーレスエントリー向けコイル分野でも世界No.1シェアを持っていると自負している。
 しかし今振り返れば、香港時代におけるインベーダーなどのゲームブームがコイルや電源をはじめとする部品の重要性を引き出したと思う。

―― 今後の製品面における展望は。
 八幡 民生品分野についてはかなり成熟化しており、なかなか金額は上がってこない。今やスミダも自動車向け製品の売り上げが全体の60%を占めている。やはり次世代カーエレクトロニクスに貢献する製品開発を急ぐ必要があるだろう。コイルは温度、湿度、振動で大きく変化するため、これを品質よく量産するのは実は大変なことだ。
 まずは自動車分野を深掘りするが、時代の流れから見て、次のターゲットは航空産業、医療産業であると思っている。コイルだけではダメで、電源の技術にも磨きをかける。医療については、日本光電グループの変成器事業部門を14年3月に譲り受けた。日本光電グループの持つ医療機器向けトランス技術と、そのユーザーであるメディカル関連へのネットワークが築けた。家電系ではパワー系のモジュール製品を拡大したい。

―― 今後の売り上げ展望について。
 八幡 海外販売比率はさらに引き上がっていくだろう。現状で国内20%、海外80%という売り上げ比率であるが、アジアを中心に経済成長が目覚ましいエリアに向けて製品が出ていくのは間違いない。13年度の売り上げは638億円だが、10億ドル企業を目指し、積極的なM&A、さらには設備投資を考えていく。電子部品業界の営業利益率はせいぜい5%程度であるが、スミダとしては10%程度を常時上げられるよう頑張っていきたい。


(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2014年9月24日号3面 掲載)

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