電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第99回

「流体制御」をコア技術に半導体、液晶、太陽電池などを支える!!


~意気あがる伸和コントロールズの九州スタッフの思考法~

2014/9/5

「この会社は1962年6月に発足したが、いつにかかって液体・気体である流体を制御する技術をコアに展開してきた。まずブレークしたのは、流体コントロールの電磁弁(ソレノイドバルブ)であるが、その後、精密空調装置、液体温度調節装置(チラー)を製品化し、これは世界市場で5本の指に入る導入実績を誇っている」

 こう語るのは伸和コントロールズ(株)(本社・川崎市)の九州事業所(長崎県大村市雄ヶ原町1313-46、Tel.0957-52-7501)にあって執行役員・海外事業担当の江縫賢介氏である。開発型ベンチャーともいうべき同社は、キラー技術の「流体制御」を最強の武器にして半導体、液晶パネル、有機薄膜太陽電池、リチウムイオン電池、燃料電池、有機ELなどの電子デバイス分野にその活躍の舞台を広げてきた。

 同社の九州事業所がある大村は、古くはキリシタン大名、大村純忠の居城があったことで知られ、また長崎空港の玄関口でもある。R&D型の企業が多く集積する山の上の大村テクノパークに92年3月に進出し、伸和コントロールズの生産の約半分を担う量産拠点となっている。

 同社の九州事業所長の任にある執行役員の楠本達司氏は、この工場の特徴と今後の方向性についてこうコメントする。
 「2008年7月に、わが社は経済産業省『元気なモノ作り中小企業300社』に選出された。精密で丁寧なモノづくりを評価していただいたことは本当に嬉しい限りだ。すでに1号棟(1803m²)、2号棟(1860m²)、3号棟(1041m²)が立ち上がっているが、近々にも新管理棟(1250m²)が完成・稼働する。半導体関連の精密空調装置、液体温調装置の製造がメーンであるが、開発型工場であること、海外出荷に向けた拠点であることに最大の特徴がある」

 筆者は工場内部を視察させていただいたが、非常にクリーンな環境を維持していること、そして何よりもあらゆる工程がほとんど手づくりというカスタム性に驚かされた。半導体や液晶は、メーカーによって仕様が違うため、まさに工場ごとのカスタム性が求められるわけであり、九州事業所は優秀な労働力を集め、この対応に成功しているのだ。人員は全体で153人。ほとんどの人が大村エリアから集まっている。中国や台湾の大量生産型ではできないきめ細やかなモノづくりが息づいているニッポン工場の典型だな、というのが素直な感想であった。

伸和コントロールズの九州スタッフ(右から楠本氏、西村氏、大坪氏、江縫氏)
伸和コントロールズの九州スタッフ
(右から楠本氏、西村氏、大坪氏、江縫氏)
 若手のエースともいうべき生産技術センター長兼製造部長の大坪貴幸氏は、福岡県太宰市の出身、長崎大学工学部で電子工学を学び、同社に入社する。
 「生産革新を常に心がけている。全社的にも生産性の10%アップが目標とされており、スピードアップと品質向上の同時立ち上げに全力を挙げている。まずは材料などモノの手配がこれまで15日間かかっていたが、これを7日間まで短縮した。また、これまでは図面ができてから製造に着手していたが、図面が仕掛かり中であっても同時並行で製造に着手するという手法を確立した。とにかく、いつも考えていることは、一に工夫、二に工夫、ひたすら工夫で、できないこともできるようになる!ということだ」(大坪氏)

 同じ若手のエースである開発センター長の西村健二氏は、まさに地元の大村市出身、大坪氏と同じく長崎大学大学院で機械工学を学び、同社に入社する。
 「開発力で生きていくことが、九州事業所の役割だといつも思っている。半導体向け装置は、お客さまのわずかな仕様の違いでガラッと作り方が変わってくる。このカスタム対応のための派生開発のリードタイムを縮めることが最も重要。これまで70日かかっていたリードタイムは40日まで縮めることができた。さらに半分以下まで縮める計画であり、とにかく考えて、考えて、考え抜く力を身につけていきたい」(西村氏)

 新管理棟が完成すれば、そのフロアに開発部隊が集結され、さらにチーム力は引き上がっていくという。また、管理部隊が集約されることで既存工場内にも空きスペースができるため、さらなるラインの増強が図れるのだ。

 「2014年6月期売り上げは過去最高の74億円超えであった。2015年6月期の計画は80億円に設定しているが、このうち九州だけで40億円を目標にしている。当面の目標は、やはり全社売り上げ100億円突破である。月に1回は社長も参加する経営検討会を開催していることで即断即決の体制がとれているため、若手の意見もビシバシと採用されていく」(江縫氏)

 この工場を訪れた日は、夏の雨がしとしとと降っていた。クールファイブの「長崎は今日も雨だった」を口ずさみながら、感銘を胸に空港へと向かったのであった。思えば長崎は江戸の昔から世界に開かれた玄関口。ここから世界に発信するニッポンのモノづくりは今だに意気盛ん、との思いがこみ上げてきた。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。日本半導体ベンチャー協会会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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