7月に開催された商業施設新聞企画のポートランド業態視察ツアーで、ZGF建築事務所の渡辺氏に米国ポートランドの街づくりについてレクチャーを受けた。渡辺氏は、「道空間をつくることが街づくりにおいてきわめて重要」と指摘する。つまり街づくりは道づくりというわけだ。
ポートランドの街は街区のブロックサイズが60×60mで、全米の主要都市は一般的に100~120mであることから、その半分なのである。必然的に角地がたくさん生まれ、角にはカフェやしゃれた物販があり、賑わいが生まれる。また歩道も広く、アートのオブジェもたくさんあり、歩いていて楽しい。このため、「ウォーカブルタウン」などとも称され、日本のデベロッパーは、自分たちの街づくりに活かそうとポートランドの街づくりに注目している。
では、ポートランドにあって日本にないものとは――。取材帰りにふと思いつき、その答えを探しに、残暑厳しい8月某日東京の街を歩いてみることにした。
数多ある東京の道の中から選んだのは、中央通り。外神田5丁目から中央通りを南に下ることにした。進行方向の秋葉原に目を向けると陽炎がゆらゆらと見えるようだ。中央通りの歩道は意外と広く、ストレスを感じさせない。だが、100mも進むと電気街に入り、あきらかに人の数が急増する。秋葉原駅に近づけば近づくほどに、スラローム歩行を駆使せねば先に進めなくなる。平日と言えど、まだ夏休み期間中。中高生も多い。
さらに進むと、神田駅が見えてきた。ビルの1階には居酒屋系が目立ってくる。やや歩道の幅も狭くなっているが、人の数もまばらになり、歩きにくくはない。何か気分がすぐれないのは、2時を回って傾きかけ始めた日差しの照りつけによるものだけでなく、暑さにやられたサラリーマンが疲れた顔をしているからか。かく言う自分も砂漠を彷徨っているような顔をしているに違いない。
今川橋交差点を過ぎ、遠くに見えていた日本橋三井タワーが迫ってくる。室町4丁目を過ぎると明らかに雰囲気が変わる。歩道は広く、街路樹の代わりに花壇がしつらえてある。広々と開放感があるのだ。にわかに気分も高まってくる。
ほどなくユイトやコレド室町が現れてくる。コレド室町の裏手に回ると、石畳みの小道が整備され、飾られた金魚の提灯が日本の夏を演出する。人々が思い思い日差しを避け休んでいる。街はエリアごとにしっかり個性があるのだなと改めて気づかされる。
しゃれたカフェが多く目に留まることはなかったが、代わりにこれでもかとあったのが、コンビニだ。涼と冷たい飲み物を提供してくれ、何度ありがたいと感じたことか。日本式に進化したコンビニの凄さを改めて思い知らされた。
この日の気温は32度。行程2.4kmだが、行き帰りを含めると4km近く歩いてしまった。アホだなと感じつつも、得たものは決して少なくない。