電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第98回

NEDIAが10月末に京都で大型の電子デバイスフォーラム


~日本勢が世界トップシェアを持つ一般電子部品に焦点~

2014/8/29

 「アップルの新型スマートフォンのiPhone6は、待望の大型化により過去最高の販売台数が見込まれるのだ。おそらく4.7型と5.5型の2種類を投入すると思われる。フィルム面積の拡大で日東電工、さらに薄くなることで村田製作所、太陽誘電、TDK、新機能でローム、浜松ホトニクスなどが大きなメリットを受けることになるだろう」

 こう語るのは、東海東京調査センターの企業調査部シニアアナリストの萩原幸一朗氏である。同氏は、注目を浴びる一般電子部品および民生エレクトロニクスを担当するアナリストであるが、その鋭い切り口のレポートはかなりの評価を受けているのだ。

 さて、電子デバイスはパソコン、テレビ、スマートフォンをはじめとするIT機器を最大の出口として高成長を続けてきた。しかしながら、ここ数年は息切れ現象が続いている。もっともスマートフォンだけは世界的なブームに歯止めはかかっておらず、当面は高成長を続けると見られている。しかしそれにしても、電子デバイスの次を切り開く出口はまだまだ見えてこないのが現状だ。こうした状況下で、NEDIA(一般社団法人日本電子デバイス産業協会)は、2014年10月30日(木)10:00~10月31日(金)17:00の2日間の日程で、西日本最大の電子デバイスフォーラムを京都で初開催することを決めたのだ。

 今回のフォーラムの最大のポイントは「一般電子部品」に焦点を当てたことである。一般電子部品とは、抵抗、コンデンサー、コイル、トランスなどを中心とする受動部品がまず1つのジャンルである。また、コネクター、スイッチなどの単体部品、電源などの組み立てユニット部品や超小型モーターも大きな比重を占めている。さらには、プリント配線板、各種センサー、MEMS、各種機構部品も範疇に入っている。簡単に言えば、半導体や液晶を除く、ほぼすべてのジャンルが一般電子部品と呼ばれているのだ。

 一般電子部品の世界市場は今や20兆円に達すると見られており、ここに来ての伸びは半導体を凌ぐほどだ。重要なことは、半導体の世界市場30兆円のうち、日本勢のシェアは今や10%強となり存在感が薄い。しかしながら、一般電子部品については世界シェアの43%を押さえていると見られている。日本企業の生産額で言えば、半導体3兆円に対し、一般電子部品9兆円となり、実に半導体の3倍はあるのだ。

 一般電子部品の3大アプリは、スマートデバイス分野、白物家電、自動車分野だ。とりわけスマートフォンは、ついに2013年段階で10億台に乗せてきており、2014年は12億台が確実といわれている。ここに使われる一般電子部品は、ますますの軽量化、省面積化、省エネルギーを求められている。細かくて品質の良いところを得意とする日本勢にはうってつけの分野なのだ。


 また、自動車産業は今や我が世の春を迎えており、2014年の世界出荷台数は1億台に近づくとの予想もある。一般電子部品も多く使われており、出荷台数増に比例した伸びとともに、ハイブリッド、EV、燃料電池車など次世代環境車も増えてきており、新たな部品開発が必要になる。自動走行システムや突然衝突防止システムには、一般電子部品の点数そのものの総量が増えていくのだ。

 白物家電については、高電圧・大電流に対応可能なフィルムコンデンサーやアルミ電解コンデンサー、コイルなどが需要を伸ばす見通しだ。一般電子部品全体は、こうした強いアプリに支えられ、今後も急速に伸びていくと予想されている。NEDIAはいわゆる業界団体ではなく、電子デバイス全体のアプリ、チップ、装置、材料をオールカバーするコーディネート的団体を目指している。NEDIAが今後注力する分野の1つは、やはり世界の主役になってきた一般電子部品市場であるといっても間違いはないだろう。

 ところで、一般電子部品に強い企業を見渡して分かることは、京都企業の活躍ぶりだ。積層セラミックコンデンサーの世界チャンピオンである村田製作所、マイクロモーターで世界のトップを行く日本電産、パッケージ部品などで世界の雄となっている京セラなど、圧倒的な世界シェアを持つ京都のメーカーは数多い。
 また、MEMSにおいてはトップを行くオムロン、有力な半導体メーカーであるとともに、一般電子部品も扱うロームもいる。さらにはニチコンも京都に本社を持っている。半導体や液晶製造装置で有名な大日本スクリーン製造も京都が拠点である。堀場製作所は自動車排ガス分析装置、半導体向けマスフローコントローラーの分野での世界一であるが、もともとは京都で生まれたベンチャー企業であった。
 こうした一般電子部品や装置の有力企業を多く擁する京都において、西日本最大の電子デバイスフォーラムが開かれることにはそれなりの意味があるのだ。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。日本半導体ベンチャー協会会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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