仙台市(市立病院整備室、Tel.022-266-7111)では、「新仙台市立病院」が竣工し、8月4日に報道機関向けの内覧会を実施した。新病院は政策的医療の充実を図る方針を掲げ、新たに小児救急医療や身体合併症精神科救急、また救命救急医療と災害時医療の充実に努める。さらに病床数は従前の525床と変わらないものの、患者1人当たりの占有面積を広げることで快適性を向上させた。今後、11月1日の開院へ向けて各種医療機器の搬入と設置、機材、備品などの導入、整備を行う。
内覧会の冒頭、亀山元信院長は「新病院移転新築の決定からほぼ10年が経過した。職員が日常業務と並行して病院づくりを行ってきた。11月1日の開院へ向けて万全な準備を行っていく。内覧会では政策的医療の拡充を見てもらいたい」と挨拶した。
仙台市では、1999年度の耐震診断で市有施設の目標耐震性能を下回ることが判明し、仙台市立病院について2004年に移転新築を前提とする病院構想の検討に着手した。07年に基本構想を策定、10年の基本設計、11年3月の実施設計完了を経て同年12月に本体着工し、14年7月15日に竣工した。
新病院は、仙台市中心部から南東の仙台市太白区あすと長町1-1-1に立地し、交通アクセスは市営地下鉄南北線「長町1丁目」駅から約260m、JR東北本線「長町」駅から約600mに位置する。施設は敷地3万5018m²の西側に病院本館(RC造り免震構造地下1階地上11階塔屋1階建て延べ5万2286m²)、南側に厚生棟(延べ1364m²)、北側に研修医宿舎棟(延べ2150m²)を設けている。敷地東側には駐車場を配置し、将来の建て替えに備えた建設用地として活用するとしている。駐車場は東と北側を合わせて501台、駐輪場196台分を確保した。
病院本館の1階フロアは、専用の交通広場に面して2階まで吹き抜けのエントランスホールを設け、再来受付、自動支払機、総合サポートセンターと調剤室、カフェ「タリーズコーヒー」、CVS「ローソン」などの病院ロビーの機能を配置した。またフロアの大半は救急外来の診察室と処置室、救急CT、X線撮影室、心臓カテーテル検査、血管撮影室、MRI、CTなどを配置。さらに「仙台市夜間・休日こども急病診療所」を設けて別途運営する。このほかリハビリテーション室を配置し、災害時には緊急患者の受け入れスペースとする。
外来診療棟は地上2階に配置し、1階エントランスからエスカレーターやエレベーターで入館する。フロア中心部はスタッフや患者が縦軸に移動するためのエレベーターが多数配置されており、その周囲に診療科目別に診察室が背中合わせにスタッフ専用通路を挟んで配置され、外来待合の患者と動線を分離して作業の効率化を図る工夫がなされている。また隣接する厚生棟には患者と見舞い客向けのレストランと、スタッフ専用の食堂を設け、厨房を共有した形で運用する。
3階は管理、栄養、リネン、医局、診療材料供給のほか、300人収容の講堂には災害時に対応した医療用酸素の供給配管がなされている。4階は病院機能の中核となる手術室8室、救命救急センター機能のICU 16床、HCU 24床を配置し、「手術室2」は将来のハイブリッド手術対応を予定している。また、院内専用の血液透析7床を設けている。
5階は周産期母子医療センターとして、クリーンルーム対応のNICU 6床、GCU 4床、LDR 4室を設けている。産科、婦人科の病棟を配置し、個室率は50%とプライベートに配慮している。
病棟は6~10階に配置している。6階は内科・糖代・感染症の45床と小児科36床、7階は消化器内科の44床と循環器内科の44床、8階は脳外科の43床と神経内科・耳鼻咽喉科・眼科・皮膚科・歯科の44床、9階は整形外科44床、外科44床、10階は精神科の閉鎖病棟50床となる。各病棟はエレベーターホールにセキュリティーゲートを設け、患者や見舞い客はIDカードで入館するシステムを採用している。また、東西の病棟はピンクと緑で色分けしており、そのほかのフロアも機能別に色分けされている。各病棟ではアメニティー向上を図るため、既存の6床室を4床室に変更することで1人当たりの占有面積を拡大するとともに、1床室も全体の30%へと増やしている。また廊下や病室の壁面には木目調を採用し、外光を取り込むことで心の落ち着きに配慮している。
このほか地下1階には、がん治療の高精度放射線治療装置「リニアック」を導入する。CT装置を備え、腫瘍の正確な位置を表示することで、X線照射の正確性を高めた。6軸寝台の採用で0.1mm単位の補正が可能となり、治療時間を大幅に短縮できるという。エレクタ シナジー製の装置で東芝メディカルシステムズが保守管理する。