電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第85回

(株)村田製作所 代表取締役社長 村田恒夫氏


通信に続き医療・自動車など拡大
積層セラコンの世界トップを疾走
独自技術で新製品売上高40%を維持

2014/8/8

(株)村田製作所 代表取締役社長 村田恒夫氏
 積層セラミックコンデンサー(MLCC)の世界トップをひた走る(株)村田製作所(京都府長岡京市東神足1-10-1、Tel.075-951-9111)は、2013年度に過去最高となる売上高8467億円を達成した。14年度は売上高9200億円を計画しており、いよいよ1兆円の大台が視界に入ってきた。代表取締役社長の村田恒夫氏に今後の事業戦略を聞いた。

―― 貴社の来歴について教えて下さい。
 村田 当社は1944年に京都で創業した。伝統産業の町でもある京都で、創業者の村田昭は電子セラミックスという新しい素材を創り出した。創業者は陶器屋に生まれ、39年に戦前の京都を代表する企業であった島津製作所に航空計器の計器用部品を納入したことがきっかけで、精密特殊陶器の分野を手がけることになった。その後、44年に個人企業として創業したのが当社である。翌45年に酸化チタン磁気コンデンサーを製品化したことが、当社がセラミックコンデンサーメーカーとして飛躍する第一歩となった。
 戦後、ラジオやTVの普及を背景にセラミックコンデンサー事業を拡大するとともに、フィルター、サーミスターなどの製品を次々に開発し、電子部品のラインアップを拡充した。電子機器の小型化に伴い、小型、薄型のMLCCに強みを持つ当社は今も成長を続けている。

―― 独自技術、製品の開発を強く志向しています。
 村田 当社は社是に「技術を練磨し、科学的管理を実践し、独自の製品を供給する」と掲げている。独自技術と製品の開発は、創業者から受け継がれた根幹となる精神だ。
 セラミック材料~成形~焼成~加工~完成までの生産一貫体制を構築し、材料開発、プロセス開発、商品設計、生産技術といった技術基盤を独自に開発・蓄積していることが当社の特徴であり、強みである。材料技術は川上を支える根幹として将来を見据えた開発を行っている。成形では薄いセラミックシートから複雑な形状を作り、焼成工程では炉内の挙動をコントロールして最適な性能を実現し、様々な電子部品に加工していく。独自に開発した生産設備に固有技術を蓄積し、他社との差別化を図ってきた。主力のMLCCは14年5月に世界最小の0201サイズ(0.25×0.125mm)品を業界に先駆けて量産化した。

―― コンデンサー以外の製品も拡大しています。
 村田 モバイル機器向けでは無線信号の中から必要なものだけを取り出す表面波フィルター、インダクターや、多層基板技術と部品内蔵技術を応用した通信モジュールが好調だ。また、自動車市場では横滑り防止装置(ESC)などに搭載されるMEMS加速度センサーが需要を伸ばしている。ESCは欧州・北米で搭載が義務づけられ、日本でも12年10月以降の新型車およびフルモデルチェンジ車には装着が義務化されている。今後の普及拡大が期待できる製品だ。

―― 売上高1兆円の達成が見えてきました。
 村田 会社として売上高の達成を特に意識はしていない。数字は世の中の景気に左右されるからだ。それよりも製品の用途拡大を進めて現在約半分を占める通信分野以外のウエイトを高め、将来の持続的な成長につなげたいと考えている。

―― 通信分野に続く新たな用途とは。
 村田 自動車、医療、エネルギーの3分野をターゲットにしている。具体的な取り組みとして、当社が持つセンサーと無線通信機能との融合を進化させる。例えばフィンランドのグループ会社Murata Electronics Oyは、自動車用やペースメーカー用の加速度センサーを手がけている。また、米国のグループ会社RFMは、ペースメーカー向けに高周波フィルターを提供している。これらの技術を組み合わせて展開拡大を図っていく。まず当面の目標は、自動車市場向けの販売比率拡大だ。コンデンサー、加速度センサーなどの展開を強化し、現状の15%から比率を高めていく。

―― 事業のグローバル化が進んでいます。
 村田 当社製品の90%は海外で販売されている。うち50%以上が中国だ。
 生産は75%が国内だが、コスト競争力向上などのため海外生産比率を上げていく考えだ。今後は海外での生産比率を2年ほどで30%に高める。

―― 海外生産拡大においては技術流出を防ぐことが重要です。
 村田 前述のとおり、当社の事業はノウハウが多い。例えばセラミック素材はレシピから自社で開発・製造しており、装置も前工程を中心に大半を内製化しているため、部分的に切り取っても再現することはできない。もちろん、技術者経由での流出を防ぐことには細心の注意を払っている。

―― 海外生産が拡大するなかで国内拠点の役割は。
 村田 当社は新製品の売り上げ比率が40%を占めており、これを持続させることが成長には欠かせないと考えている。そのためにも技能レベルの高い国内拠点は重要で、今後も大きな役割を果たしていく。顧客ニーズや求められる技術に変化があっても、他社に勝るコア技術が必要であることには変わりがない。
 研究開発の中心となっているのが野洲事業所(滋賀県野洲市)だ。27万m²もの広大な敷地を持ち、材料、先端技術、半導体、薄膜微細加工技術などの分野で研究開発を行っている。これらの技術を有機的に結びつけていくことで、競争力のある独自製品を生み出していく。

―― 設備投資計画について教えて下さい。
 村田 14年度は、前年比17%増の800億円の投資を計画している。うち25%を海外拠点における生産能力増強に投じ、中国やフィリピンでMLCCを中心に拡充する。MLCC以外では通信モジュール、EMI除去フィルター、インダクター、表面波フィルターなどを中心に能力を増強する予定だ。


(聞き手・特別編集委員 泉谷渉/中村剛記者)
(本紙2014年8月6日号1面 掲載)

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