商業施設新聞
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No.468

時代はステーショナリー


松山 悟

2014/8/5

 記者生活が30年を超えたが、最初のころは三菱鉛筆の2Bで、藁半紙の原稿用紙に記事を書いていた。10円のカミソリで鉛筆を削りながらである。おかげで机の上は鉛筆の削りくずと消しゴムのカスだらけだった。
 そのうち、削るのが面倒臭くなって鉛筆からボールペンに替えた。今と違ってボールペンの文字を消すことができないので、間違ったところは斜線を引いた。挿入するところは原稿用紙の枠外に書いた。自分で言うのもなんだが、出来上がった原稿は汚かった。当時は活版印刷で、その部署の人たちは、各記者のくせ字を熟知しており、鼻歌交じりにいともたやすく活字を組んでいた。まさにプロの技だった。

 やがてワープロが出現する。ワープロは会社から支給されたわけではなかった。私は原稿の仕上がりが綺麗な方がいいだろうと、10万円ぐらいのワープロを10回払いのクレジットで買った。3回目を払い終わるころ、そのワープロは店頭で半値になっていた。猛スピードで進む技術革新に泣かされた。
 そしてPCの時代になる。PCは会社から支給された。OSがMS-DOSからWindowsに進化していくにつれ、PCへの依存度が高くなり、文房具はポールペンと取材手帖だけになってしまった。活字を組む部署もいつのまにかなくなっていた。

可愛さ溢れるステーショナリー
可愛さ溢れるステーショナリー
 初めて雑貨店を取材する時、販売品目にステーショナリーとあった。なんのことだろうとネットで調べてみると、「ちょっとおしゃれな文房具のこと」とある。いつごろステーショナリーと呼ぶようになったかはわからなかったが、会社名の入ったボールペンなどは、ステーショナリーとは呼ばないらしい。

 色とりどりの手帳やノート、ペンなどがある。若い人はこんなのを使って勉強しているのかな。頭に入るのかなと思ってしまうが、木目で高そうな万年筆や重厚な気品あるノートのコーナーもあった。商品構成に抜け目がない。

できる大人も満足の高級ステーショナリー
できる大人も満足の高級ステーショナリー
 キャラクターの消しゴムを見ていた。随分種類があるものだ。若い人は、「これが可愛い」とか「こっちのほうが可愛い」と可愛さ比べをしているが、私はキャラクターの顔を見ていたら、昔、小学校の前にあった文房具屋さんのおばあちゃんの顔を思い出してしまった。おばあちゃんから校門、クスノキ、担任の先生、同級生と連鎖していく。ステーショナリーは年配者にとって、思い出の玉手箱なのかも知れない。
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