本格的な夏のシーズンに入った。今年度も電力需給の逼迫が見込まれ、各社でさまざまな対応策が講じられている。なかでも電力消費の大きい生産工場での省エネ化は大きなテーマとして捉えられており、近年、電力監視・制御機器などの導入が急速に進んでいる。大手電機メーカーのパナソニック(株)(大阪府門真市)には、それらの省エネ支援機器を製造し、かつその生産工場を製品のショールームとして活用している企業がある。それがパナソニック デバイスSUNX竜野(株)(兵庫県たつの市龍野町片山300、Tel.0791-63-0511)だ。
同社は、パナソニックグループ内で、FA用センサー製品などを扱うパナソニック デバイスSUNX(株)(愛知県春日井市)の関係会社で、省エネ支援機器やプログラマブル表示器の開発製造、電子実装などを行っている。設立は1970年12月で、JR本竜野駅から徒歩15分、車で5分の距離に位置し、本社・竜野工場の敷地面積は甲子園球場の約1.2倍の約4万7000m²、建物面積は約1万7000m²の規模を有する。そして同拠点の最大の特徴が、工場自体が省エネ支援機器のショールームとなっている点だ。
チップ実装ラインに「エコネクトシリーズ
電力センサ」を設置(丸部分が製品)
パナソニックでは2005年度からグループ全体でCO2削減活動を本格的に行っており、竜野工場においても07年度から独自の取り組みを開始。具体的には省エネ支援機器「エコパワーメータ」を自社開発し、同装置を工場内に約650台設置。加えて、同じく自社開発の見える化システムを構築している。また、従業員からの省エネ提案制度を設け、その効果の度合いにより報奨金を与えることで、普段から省エネ意識を高めている。
これらの活動により、05年時に6590t/年であったCO2排出量が、13年時点では2473t/年まで減少し、8年間で62%の削減に成功した。その成果が認められ、5月には「第23回兵庫県環境にやさしい事業者賞」を受賞した。同工場には、エレクトロニクス関連・食品・化学企業など、多岐にわたる分野の企業関係者が視察のために訪れ、その人数は年間約1500人、延べ1万人以上にのぼる。
新製品の開発も積極的に進めており、7月からは「ECOnect(エコネクト)シリーズ 電力センサ」の受注を開始した。これは従来別々であった無線通信機能と電力計測機能を一体化した製品で、他の省エネ支援機器との接続を簡易化。また、無線通信機能を備えていることから、設備導入やレイアウト変更への対応力が高く、自動車工場に試験的に導入した結果では、施工費用を45%削減することに成功した。無線周波数には920MHz帯を採用しており、見通し距離1kmまで対応可能。回折性も高く、障害物があってもつながりやすく安定した通信が実現できる。価格は5万円(税別、工事費別)で、無線機器と電力計測機器をそれぞれ購入した場合と比べ約2割コストを削減できる。用途としては、工場向けのほか、オフィスビル、コンビニなど店舗への導入を見込んでおり、竜野工場ではチップ実装ラインに設置している。
パナソニック デバイスSUNXの13年度売上高は前年度比5%増の売上高395億3000万円であった。うち、前述のエコネクトシリーズを含む省エネ支援機器の売上高は約10億円。同社ではこれを16年度に22億円まで引き上げることを目指していく。