商業施設新聞
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No.465

あべのハルカスがんばって!


今村 香里

2014/7/15

 先日、母が数年ぶりに地方から関西の我が家に遊びに来たので、今、大阪の観光地で最も盛り上がっているであろう「あべのハルカス」に行った。あべのハルカスには百貨店もあるほか、周辺には商業施設も豊富にあるので、買い物も観光も一カ所で済ませられ、便利である。最上階の展望台へ行くには、チケットの購入で大勢の人が並んでいたため断念した。せめて無料で行けるところまで……と、オフィス棟の入り口まで足を運んだ。そこにはテラス庭園があり、最上階ではなくても良い景色が眺められ、母も満足げだった。

 ちなみに母は、あべのハルカスのお土産を私の弟に渡したのだが、弟はあべのハルカスの存在を知らなかったらしい。無理もない。盛り上がっているのはおそらく関西人だけであろう。いつかのテレビ放送でも、関東の人は知らない人がいると街頭インタビューで言っていたのを思い出した。日本一高いビルの知名度は、まだまだ全国区ではないようだ。

ソラハでは個性的なソファをフロアの中央に設置した
ソラハでは個性的なソファを
フロアの中央に設置した
 今回は少しだけ、あべのハルカス近鉄本店のウイング館2~4階(一部地下2階)にオープンした「solaha(ソラハ)」に注目する。若年層を対象に専門店を集積しており、10代後半~20代後半の女性をターゲットにしている。初年度は売上高100億円を目指すという。

 ソラハの営業面積は1万1000m²で、専門店105店を集積した。このうち全国初出店は5店、西日本初出店は9店となるほか、約7~8割が阿倍野・天王寺エリア初の店舗となり、エリアに話題と新鮮さをもたらした。

 フロアは、コンセプトごとに6つのエリアにゾーニングされ、ひとつのゾーン内でトータルコーディネイトを可能にしている。各フロアはカラフルな色を取り入れ、デザインも斬新だ。2階は外部からソラハへ直接入店する独立したエントランスを設けており、ソラハの顔になるフロアだ。
 ここ《パープルエリア》では、トレンドを意識しながらも自分らしいスタイルを貫く、10代後半~20代半ばの大学生や社会人1~2年生をターゲットに売り場を構成している。全国初出店となる「アイランド」が70坪で出店し、人気ブランドであるセシルマクビーや雑貨のセシルデイズなど4業態を揃えた。同じく全国初の「ジプソウルBy goa」は30坪で出店、遊牧民をイメージするgoaの新業態で、生活雑貨の比重を高くしているという。同フロアには、時計、帽子、アクセサリー、インナーウェアやメイクグッズを豊富に扱うドラッグストアの「アインズ&&トルペ」が53坪で大阪初出店し、欲しいものがトータルで揃っている。

 3階は、東側に《ピンクエリア》、百貨店がメーンで入居するタワー館側に《ブルーエリア》を設け、中央に休憩にも使用できるパブリックスペースを設置。《ピンクエリア》では20代~30代のOL層を対象に、大人の可愛らしさをアピールするブランドを導入している。定番の「レッセ・パッセ」や関東で話題の「グースィ」などが集結した。《ブルーエリア》は、タワー館3階の《トレンドコート》(高感度セレクトショップを集積)とのアクセス性に最も優れていることから、感度の高いOL層に向けたファッションを発信する。中でも「ランゲージ」は通常の倍の40坪で出店し、ドレッシーにスポーティさを取り入れるなど、日常使いできる新スタイルを提案して幅広い顧客層を狙っている。

 3.5階も2エリアに分かれており、東側には《イエローエリア》を展開。高校生や大学生を対象に"原宿系"ストリートカジュアルを中心に店舗を集積した。西日本初の「ヘザービィ」は29坪で出店し、人気のヘザーよりストリートやモードを強くした姉妹ブランドとなる。一方のタワー館側の《グリーンエリア》では、自然体を楽しみたいすべての女性をターゲットにナチュラル系コスメや雑貨を充実させている。日本原生の野草や有用植物を活用した化粧品ブランド「北麓草水」は西日本初の店舗で和をイメージした内装が特徴的だ。個人的にはここの化粧品がお勧めである。

 4階は《アッシュエリア》で、高校生や大学生に向け“渋谷系ギャル”を意識したブランドを揃えた。「リュクスローズ ワンウェイ」は人気のワンウェイやバイバイを取り扱う全国初の店舗となった。

 また3階と3.5階にはカフェを設置したほか、おけいこスポットの「しゅみあん」や、2階奥には10代をサポートする読者参加型メディア「JOL」を設置するなど買い物以外の楽しみ方も出来る空間を多く取り入れている。

 ソラハは、ターゲットを明確にフロアを構成したことで、顧客の望むスタイルをワンフロアで完結する事を可能にした。駅に近いことからも学校や仕事帰りに立ち寄りたくなる場所になると思う。加えて、百貨店との回遊性を考慮することで将来、ソラハを卒業した後も百貨店での買い物に抵抗なく移行できる工夫がみられる。

 天王寺・阿倍野エリアは、高校や専門学校などが多く立地し、平日でも駅周辺の商業施設では賑わいがある。また、あべのハルカスでオフィス棟やホテルも開業したことから、エリアで働く人の人口も増えているという。しかし、ソラハのターゲット層と同じ層を狙う店舗は、付近の天王寺MIOやあべのキューズモールにも存在し、競合が全くないわけではない。

 昨今、館のファンづくりが集客のポイントといわれているほど、館の特徴が必要である。その点ソラハでは、デザイン性のあるソファを配置したり、カフェで習いごとができたりと工夫しているが、この工夫はどこまで集客につながるのか――。大阪の景気を伸ばすためにも、あべのハルカスとともにがんばって欲しいと思う。
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