商業施設新聞
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No.462

大手コンビニもようやくセコマに近づいてきた


高橋 直也

2014/6/24

 コンビニの取材に行く機会が増えた。新商品、異業種とのコラボなど何かと話題がつきない。大手の業績は好調で、決算会見に行くたびに「過去最高の売上高」「3期連続最高益」など景気の良い言葉が出る。その背景にはPBや弁当をはじめとした自社オリジナル商品の質が上がったこと、生鮮の導入など商品の幅を広げることで、他業種から客を奪うのに成功したことなどがあるだろう。そんな中、北海道出身としては好調の背景に「各社のキャラが立ってきた」ことを挙げたい。

 北海道には道民の心をワシ掴んで止まないコンビニが存在する。その名をセイコーマートという。そのロゴマークは不死鳥でありフェニックス。略称は「セコマ」か「セーコマ」。一部上級者は「コマート」と呼ぶ。店舗数は道内だけで1000店以上あり、道内のコンビニでナンバーワンだ。もしあなたが、北海道生まれの人と会ったとき「セコマのとり天丼ウマイですよね」と言えばたちまち仲良くなれます。

 「セコマ」は北海道地盤のローカル企業でありながら、やたらと先進的だ。今ではコンビニでも珍しくなくなった会員カードを2000年には開始していた。さらに、コンビニの必需品となりつつある野菜など生鮮品を少なくとも10年前から置いている。しかもワインなど酒類を豊富に取り揃え、店内調理で弁当や惣菜を販売するなど、とにかく特徴的というか、キャラが立っている。道民は看板を見なくても、売り場だけ見ればセイコーマートと判別できる人が多いだろう。

 もちろん北海道にはセイコーマート以外にもコンビニはある。セブン―イレブン、ローソンは数百店出店している(ちなみにファミリーマートが北海道に進出したのは06年と比較的最近で、まだ店舗数が少ない)。しかしセイコーマートが特徴的な商品を揃えることから、セコマ以外のコンビニは特徴というかキャラクターが薄く感じた。「セブン? ローソン? どっちも大して変わんないべや」といった風に。つまり、道民にとってコンビニは「セコマかセコマ以外」の2種類だった。そのため、弁当を食べたければ多少遠くともセイコーマートに足を延ばすことがあった。数年前まで道内のコンビニ、スーパーは結構セイコーマートに客を奪われていたと思われる。

ファミマ!!は出店立地に合わせた品揃えをして差別化を図る
ファミマ!!は出店立地に合わせた品揃えをして差別化を図る
 ところが、最近になってセブン―イレブンやローソン、ファミリーマートなど大手は自社の特徴・強みが明確化してきた。例えばセブン―イレブンならPBのクオリティの高さ・アイテム数の豊富さ、ローソンなら生鮮品の豊富さや店内調理品のクオリティの高さだ。セブン―イレブンのPBのおいしさには目を見張るものがあるし、ローソンがカウンターフーズでアジフライとイカフライまで売っているのを見た時は驚いた。また、ファミリーマートのファミマ!!はオフィスビルなど出店立地にあわせて通常店のMDとはかなり変えている。北海道民としても、内地のコンビニもようやくセコマ並み特徴が出てきたと思う次第。

 このように大手コンビニごとに特徴が出てくると、それぞれの目的に応じた利用者が出てくる。夕飯のおかずにもう一品必要ならセブン―イレブンでPBを、弁当が食べたいならローソンのできたて弁当を買う人などは増えているだろう。

 しかも大手コンビニの店舗数は1万店以上だ。1店で1日1個、惣菜や弁当が追加で売れるだけで結構な売上高になる。なにより大量のロットを確保できるので、一品一品を安く、おいしくできる。大手は好調になるはずだ。

 コンビニが活況な一方、苦しんでいる業界の代表格が家電業界だ。家電業界が不調な要因の1つに「商品標準化」が挙げられることが多い。ヤマダ電機でもビックカメラでもパナソニックのテレビやソニーのデジカメは売っていて、店ごとに商品は変わらない。つまり、特徴が出しにくい。結局安売りになってしまい台所事情が厳しくなる。

 また、フィットネス業界も各企業の特徴を出しにくいと言われている。以前、フィットネスクラブを取材した際、担当者が「うちも看板を掛け変えたらどの店か分からない」とボソリと言っていた。それもあってか最近フィットネス業界は新業態が多い。競合が増えており、ソフト、ハードともに差別化が必要になっているという。家電業界、フィットネス業界は自社の特徴、カラーを明確化できるだろうか。
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